ぴん)” の例文
土門は豹一と並んで席に就くと「ぴんちゃん!」と呶鳴った。すると、おそろしく長い顔をした浪人者が、舞台の上からきょろきょろ客席の方を見廻した。
青春の逆説 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「あばたがえくぼに見える眼だ、あまり当てにならないが、まず本当にして置こう。ところでお栄の腕に賽の目の入墨がないとすると、一体だれの腕に残るぴんの目があるんだ」
転がすと、ぴんが出ようというやつを親指でなめずりながら、酒は鉢前はちめえで、焚火で、煮燗にがんだ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その中に一万石譜代大名に近いぴんから槍一筋馬一頭二百石のきりまであって、饗庭はどっちかといえば、まずきりに近いほうだから、この屋敷にしたところで五百つぼはないくらい
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と磨いていで礪ぎ出した純粋きつすゐ江戸ッ子粘り気無し、ぴんで無ければ六と出る、忿怒いかりの裏の温和やさしさも飽まで強き源太が言葉に、身じろぎさへせで聞き居し十兵衞、何も云はず畳に食ひつき、親方
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ぴんだーッ」
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「あれは中井ぴんというんだ。顔が長いだろう? だから、長井ぴんとよぶ奴もある。僕の親友です」土門は豹一にそう説明した。そして、また呶鳴った。「森ぼん!」
青春の逆説 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
みがいていで礪ぎ出した純粋きっすい江戸ッ子粘り気なし、ぴんでなければ六と出る、忿怒いかりの裏の温和やさしさもあくまで強き源太が言葉に、身動みじろぎさえせで聞きいし十兵衛、何も云わず畳に食いつき、親方
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)