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もちなほ
恐ろしいより、
夢と
知れて、
嬉しさが
前に
立つた。
暫時茫然として
居たが、
膚脱ぎに
成つて
大汗をしつとり
拭いた、
其の
手拭で
向う
顱卷をうんと
緊めて、
氣を
確乎と
持直して、すた/\と
歩行出す。
話せしかば長兵衞も是はお常の
仕業ならんにより
捨置べしとは思ひけれども庄三郎が
達ての頼みを
聞ざるも
氣の
毒と思ひ長兵衞申は
何卒身代を
持直し給へ
殊に先祖代々の
地面を
と
云つて、
杖をまつすぐに
持直すと、むかうで
長頭が、
一つ
幽な
咳。