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ぶつしつてき
財貨によつて
物質的の
滿足を
自分の
暖かな
懷に
感じた
時凡ては
此れを
失ふまいとする
恐怖から
絶えず
其心を
騷がせつゝあるやうに
此温泉が
果して
物質的に
僕の
健康に
效能があるか
無いか、そんな
事は
解らないが
何しろ
温泉は
惡くない。
少くとも
此處の、
此家の
温泉は
惡くない。
「
矢張り
物質的の
必要かららしいです。
先が
何でも
餘程派出な
家なんで、
叔母さんの
方でもさう
單簡に
濟まされないんでせう」と
何時にない
世帶染みた
事を
云つた。