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ふぢもと
藤本は
來年學校を
卒業してから
行くのだと
聞いたが、
何うして
其樣に
早く
成つたらう、
爲樣のない
野郎だと
舌打しながら
陰に
廻りて
機械の
糸を
引きしは
藤本の
仕業に
極まりぬ、よし
級は
上にせよ、
學は
出來るにせよ、
龍華寺さまの
若旦那にせよ、
大黒屋の
美登利紙一
枚のお
世話にも
預からぬ
物を
學校にての
出來ぶりといひ
身分がらの
卑しからぬにつけても
然る
弱虫とは
知る
物なく、
龍華寺の
藤本は
生煮えの
餠のやうに
眞があつて
氣に
成る
奴と
憎くがるものも
有りけらし。