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しやうばいがら
開ける故兩人は
渡世の事なれば那の
樣に云ずとも宜さうなものと思ひながらも
商賣柄なれば
御不肖あれ以來御世話になるも
御氣の
毒に
付鍵を
御借申
置家内の者に
開閉を
洗ひ
仕廻故清兵衞は先へ立サア/\
遠慮なしに奧へ/\と兩人を
伴ひ行先久々にての
對面互ひに
堅固にて目出たしと
挨拶に及ぶ中早や
商賣柄とは云ながら女房も
如才はなく酒と肴を
欺くと藤重は吾助に思はれ物をも多く
貰ひ花見
遊山などに
連らるゝを甚だ心
能は思はねども
商賣柄なれば
愛敬を失ひては成ずと
表面には
嬉しき
體をなして同道せしが其折々
無理なる
戀を
漸く
醫者が
來たときは、
始めて
夜が
明けた
樣な
心持がした。
醫者は
商買柄丈あつて、
少しも
狼狽へた
樣子を
見せなかつた。