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このさわ
引捕へ大事の御預り者
何れへ行るゝやと
咎むるにお政は南無三と思ひ無言にて
袖振拂ひ
駈出すをコレ/\
未だ
燒ては
來ぬぞ
此騷ぎを幸ひに
逃やうとて
逃しはせじと又引止るを
何此騷ぎの
中で
好惡を
言ふ
物が
有らうか、お
賣りお
賣りと
言ひながら
先に
立つて
砂糖の
壺を
引寄すれば、
目ッかちの
母親おどろいた
顏をして、お
前さんは
本當に
商人に
出來て
居なさる
越て
迯行しと見え
足跡の付てあれば
追駈よと
犇き合ふに
以前の旅僧未だ車の
蔭に居たりしが
此騷ぎを聞我此所に居るならば
盜賊の
疑ひ
掛りて
捕へられんも
量り
難し早く
此處を立去べしと立上りしを