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いつさうあん
宗助は
御米の
言葉を
聞いて、
始めて
一窓庵の
空氣を
風で
拂つた
樣な
心持がした。
一たび
山を
出て
家へ
歸れば
矢張り
元の
宗助であつた。
それより
以上口を
利くには、
餘り
禪といふものゝ
知識に
乏しかつたので、
默つて
又宜道に
伴れられて
一窓庵へ
歸つて
來た。
それから
逆戻りをして
塔頭を
一々調べに
懸ると、
一窓庵は
山門を
這入るや
否やすぐ
右手の
方の
高い
石段の
上にあつた。