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あまふたうげ
世の
譬にも
天生峠は
蒼空に
雨が
降るといふ
人の
話にも
神代から
杣が
手を
入れぬ
森があると
聞いたのに、
今までは
余り
樹がなさ
過ぎた。
さあ、
之からが
名代の
天生峠と
心得たから、
此方も
其気になつて、
何しろ
暑いので、
喘ぎながら、
先づ
草鞋の
紐を
締直した。
今も
人の
恐るゝ、
名代の
天生峠を
越して、あゝ
降つたる
雪かな、と
山蛭を
袖で
拂つて、
美人の
孤家に
宿つた
事がある。