あひ)” の例文
この殿にまうでて見れば、あなかしこ小松叢生むらおひ、にい寄る玉藻いろくづ、たまたまは棹さす小舟、海苔粗朶のりそだあひにかくろふ。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)
わたくしの欲望ねがひは高くまた低く、皺襞ひだの高みでは打ゆらぎ、谷あひでは鎮まりまするが、白と薔薇色のおんみの御体みからだを一様に接吻くちづけで被ひまする。
「三十日。晴。朝飯より人車三乗に而出立。亀の甲より歩行。又弓削ゆげより人車。福渡ふくわたりより駕一挺。夕七時前あひ宿しゆく久保に而藤原沢次郎へ著。」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
かくて左にむかひて我等遠くすゝみゆきいしゆみとゞくあひをへだてゝまたひとりいよ/\猛くかつ大いなる者をみき 八二—八四
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
それに今はあひですから、思ふやうな役も付きませんが行々ゆく/\は好くなられて、坂東三津五郎を嗣ぐやうになりませう。
七代目坂東三津五郎 (新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)
御米およねまたあがつて、洋燈らんぷにしたまゝあひふすまけてちやた。くら部屋へや茫漠ぼんやり手元てもとらされたとき御米およねにぶひか箪笥たんすくわんみとめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ずぼんは黒のカシミアである。沓足袋も黒い。足に穿いてゐるのは長靴と舞踏沓とのあひの子のやうな物で、それに黒い絹糸の大きな流蘇ふさが下がつてゐる。
十三時 (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
大膳は聞濟きゝすまし夫は近頃不了簡ふれうけんの女なりなどいひほどなくまくらにはつきたり已に其夜も追々おひ/\ふけわたり丑滿頃うしみつころとなりければ大膳はひそかに起出おきいであひふすま忍明しのびあけぬき足に彼女を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いかり一具いちぐすわつたやうに、あひけんばかりへだてて、薄黒うすぐろかげおとして、くさなかでくる/\と𢌞まはくるまがある。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
開きかゝりてありしふすまあひより下女の丸き赭面あからがほ現はれて「お嬢様、奥様が玄関で御待ち兼ねで御座んす」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
心得たもので八五郎は、平次のお茶らかすのも構はず、あひの手澤山に、この話を進めて行くのです。
越後の頸城郡くびきこほり松の山は一庄いつしやう総名そうみやうにて、許多あまた村落むら併合あはしたる大庄也。いづれも山あひ村落むら/\にして一村の内といへども平地なし。たゞ松代といふ所のみ平地にて、農家のうかのきつらぬ。
天にいます父よ、願はくはわざはひを轉じてさいはひとなし給へと唱へつゝ、身を終ふるまでの安樂のもとゐを立てもしたらん如く、足は心と共に輕く、こゝの小都會を歩み過ぎて、田圃たんぼあひの街道に出でぬ。
はつと思つた姉はふら/\と立上つて、あひの襖をあけて見ると、そこには黒紋附を著た父がうつ伏せに身をもがいて、今ほとばしつたばかりの血が首の処から斜めに一直線に三尺ほど走つてゐた。
父の死 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
けなさいまし、らツしやいました、さ此方こちらへ、汽車きしやの出るにはちつとあひりますよ、いま極楽ごくらくが出ましたあとでございます、これから地獄行ぢごくゆきが出ます。岩「めうだね、へえゝ、感心だね。 ...
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
あひの襖を締切つて、そこに在つた小さな机の上に洋燈を置き、同じくそこに在つた小坐蒲団の上に身を置くと、初めて安堵して我に返つたやうな気がした。同時に寒さが甚く身にみて胴顫どうぶるひがした。
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
塗籠ぬりこめの角よりななめに桐の並木のあひを出でて、礫道ざりみちの端を歩みきたれり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
屍體のあひに身を隱す、敵は知らずに馳せて行く。 350
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
風流男みやびをや、紅顏孃子あからをとめあひ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
この殿にまうでて見れば、あなかしこ小松叢生ひ、辺にい寄る玉藻いろくづ、たまたまは棹さす小舟、海苔粗朶のりそだあひにかくろふ。
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
力に伏拜ふしをが江尻えじりの宿や興津川おきつがは薩陲峠さつたたうげは七ツ過手許てもとくらき倉澤のあひの建場を提灯つけ由井の宿なる夷子屋えびすやに其夜は駕籠を舁込かきこんだり斯て藤八宿屋のあるじ委細ゐさいの樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
安井やすゐわらひながら、比較ひかくのため、自分じぶんつてゐるある友達ともだち故郷こきやう物語ものがたりをして宗助そうすけかした。それは淨瑠璃じやうるりあひ土山つちやまあめるとある有名いうめい宿しゆくことであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あひ宿しゆくで、世事せじよういさゝかもなかつたのでありますが、可懷なつかしさあまり、途中とちう武生たけふ立寄たちよりました。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
後足あとあしもゝに張り、尾をそのあひより後方うしろにおくり、ひきあげて腰のあたりに延べぬ 五五—五七
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
平次はいきなり立ち上がると、あひの唐紙、古くて貼紙はりがみだらけのを、サツと開けました。
堀の内よりはじむ、次に小千谷、次に十日町、次に塩沢しほざは、いづれも三日づゝあひおきてあり。(年によりて一定ならず)右四ヶ所の外には市場なし。十日町には三都さんと呉服問屋ごふくとひやの定宿ありて縮をこゝにかふ
舟と流のクサントス、あひ、イーリオン城の前。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
円かなる望月ながら、生蒼なまあをく隈する月の飛び雲の叢雲むらくもあひ、ふと洩れて時をり急に明るかと思ふ時なり。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
中途ちうとちるのは、とゞかないので。砂利じやりが、病院びやうゐん裏門うらもんの、あの日中ひなか陰氣いんきな、枯野かれのしづむとつた、さびしいあか土塀どべいへ、トン……と……あひいては、トーンとあたるんです。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
のべざるも不忠ふちうと存候此儀私事には候はず天下の御爲おんためきみへの忠義ちうぎにも御座あるべく依てつゝまず言上仕り候越前儀未熟みじゆくながら幼少えうせうの時より人相にんさういさゝ相學あひまなび候故昨日あひへだち候へ共彼の方を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
食事しよくじまして、夫婦ふうふ火鉢ひばちあひむかつたとき御米およねまた
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たゞに女人のあひにのみなして殺戮意にまかす。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
まどかなる望月ながら生蒼なまあをくまする月の飛び雲の叢雲むらくもあひ、ふと洩れて時をり急に明るかと思ふ時なり。
不思議ふしぎや、天守てんしゆかべいて、なかけたやうに、うをかたちした黄色きいろあかりのひら/\するのが、矢間やざまあひから、ふかところ横開よこひらけで、あみうつるのかおよ五十畳ごじふでうばかりの広間ひろま
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なんたくみもないが、松並木まつなみきあひ宿々しゆく/″\山坂やまさかけ、道中だうちう風情ふぜいごとし。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おかめ笹日かげにそよぎところづら日向に枯れぬそのあひ通る
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
夕光のさわさわ早稲わせの穂のあひにはや咲きまじる白胡麻しろごまのはな
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
空は晴れて蓮と早稲田のあひをゆく曳舟の子らが声のはるけさ
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
津のあひの広き水路にぽつぽつと出て見て消ゆる暮の鳰なれ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
湯崗子たうこうしむる竝木のあひにして帽子マオツの赤きつまみが行くなり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
日は寒し今は仰げば松ヶ枝のあひかがやかしかしに見ゆ
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
父母のあひに入り寝て思ふなり二方ふたかたの寝息あにやすからず
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
夕日赤し小犬しみらにわかみちあひの青木に小便しよんべんをすも
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
通り矢と城ヶ島辺にふる雨のあひの入海舟わかれゆく
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
母の里外目ほかめの空は雨雲のあひ青くうるひ母の眼かとも
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
湯のやかた築石垣つきいしがきあひ飛びて源氏蛍も早や末ならし
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
墓地の迷ひあひの辻
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
墓のあひ
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)