“塗籠”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
ぬりごめ65.6%
ぬりこ12.5%
ぬりかご6.3%
くら6.3%
とろう3.1%
ぬりこめ3.1%
ぬりご3.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
かの女は、良人にもだれにもおかさせない塗籠ぬりごめの一室をもち、起きれば、蒔絵まきえ櫛笥くしげや鏡台をひらき、暮れれば、湯殿ゆどのではだをみがく。
その玉章たまずさの中には、恐ろしい毒薬が塗籠ぬりこんででもあったように、真蒼まっさおになって、白襟にあわれ口紅の色も薄れて、おとがい深く差入れた、おもかげきっと視て
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わかい男はその日から昼間は塗籠ぬりかごの中へ入れられ、夜になると長者のへやへ引き出されて、切燈台きりとうだいの用をさせられました。
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
筒井はもう猶予できずに姉弟に家にはいるようにいい、とり急いで塗籠くらの階上にのぼって行った。その重いほこりの深い扉を開けると、門前一帯が見迥みはるかされた。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
ことむずかしくいえば、土牢どろう塗籠とろうで、すなわち“め”——壁ばかりな部屋ということの訛伝かでんであろうか。
塗籠ぬりこめの角よりななめに桐の並木のあひを出でて、礫道ざりみちの端を歩みきたれり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そして灰色に見える塗籠ぬりごの奥では、因襲は伝統の衣をまとって、ひそひそと人の世の秩序を説いた。新智識を制圧して浅はかな恩恵を売ろうとしていたのである。