くさ)” の例文
「ほら、ざつとしぼつて乾かして置いてくんな、——心配するなつてことよ、そんなくさつた單衣なんざ、お邸へ歸りや何枚でもあらア」
まがつた社會しやくわい正當防衞せいたうばうゑいくさつたなか大清潔法だいせいけつはふ、それらを完全くわんぜんちか執行しつかうするには、死刑しけいおほ利用りようするよりほかにないとかんがへた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ヂュリ そのやうなことをそちしたこそくさりをれ! はぢかしゃる身分みぶんかいの、彼方あのかたひたひにははぢなどははづかしがってすわらぬ。
自體彼の頭腦の中にはくさツたガスのやうな氣が充滿いつぱいになツてゐて、頭がはなは不透明ふとうめいになツてゐる、彼はく其れを知ツてゐるから
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
それはかんなか空氣くうき侵入しんにゆうしてくさやすいが、直接ちよくせつ土中どちゆううづめるとき空氣くうきにくいので、かへってよく保存ほぞんされるのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
大河おおかわにかかっている鉄橋てっきょうもとがくされていたのをこのごろ発見はっけんした。しろかげ線路せんろうえあるいていたのは、それを注意ちゅういするためだった。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
案の定、妹の婚礼に出席を撥ねつけられたとて柳吉は気をくさらせ、二百円ほど持ち出して出掛けたまま、三日帰って来なかった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
老人「何、演説をしたがらないよりも演説をすることが出来ないのです。たいてい酒毒しゅどく黴毒ばいどくかのために舌がくさっているようですからね。」
不思議な島 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
どすっ、どすっ……とわらを打つにぶきねの音が細民町を揺すっている。雨はそこらの牛飼の家や、紙漉かみすきの小屋を秋のように、くさらせていた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
嗟乎あゝをしむべし、かゝる美人びじんこの辺鄙へんひうまれ、昏庸頑夫こんようぐわんふの妻となり、巧妻こうさいつね拙夫せつふともなはれてねふり、荊棘けいきよくともくさらん事あはれむたえたり。
かくの如き溝泥臭どぶどろくさい堀割とくさった木の橋と肥料船や芥船ごみぶね棟割長屋むねわりながやなぞから成立つ陰惨な光景中に寺院の屋根を望み木魚もくぎょと鐘とを聞く情趣おもむき
そこも雨はり、たたみくさり、天井てんじょうにはあながあき、そこら中がかびくさかった。勘太郎は土間のがりかまちのところにある囲炉裏いろりの所へ行ってみた。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
あれはきつね松明たいまつるのだともひましたし、奧山おくやまくさつてひかるのをきつねくちにくはへてるのだともひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
やが梅雨つゆおびたゞしく毒々どく/\しいくりはなくさるまではとしたのでをんなきたなげなやつれた姿すがたふたゝられなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
げてのわびごとなんとしてするべきならずよしやひざげればとて我親わがおやけつしてきゝいれはなすまじく乞食こつじき非人ひにん落魄おちぶるとも新田如につたごときに此口このくちくされてもたすけを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
よそのくされ女をどうとかしたとか女が出て来るとらぬ物までるとかあるいはどこそこの女にこういう事をしたとか
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「もうつかれてあるけない。あしさきがくさり出したんだ。長靴ながぐつのタールもなにももうめちゃくちゃになってるんだ。」
月夜のでんしんばしら (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
五番の柔道じゅうどう三段の松山さんは、「くされ女の尻を、犬みたいに追いまわしやがって——」とすごい剣幕けんまくにらみつけます。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
車中でられるたびに、五尺何寸かある大きな胃ぶくろなかで、くさつたものが、なみを打つ感じがあつた。三時過ぎにぼんやりうちかへつた。玄関で門野が
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「まあ、きたないねじ釘ね。その青いものは毒なのよ。そんなものを持っていると手がくさるから捨てちゃいなさい」
もくねじ (新字新仮名) / 海野十三(著)
山畠やまはたけにかけがへのないいねくさつては、餓死うゑじにでござりまする、総領さうりやうわしは一ばん働手はたらきて、かうしてはられませぬから、とことわりをいつて、やれくでねえぞ
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのお姿をあかりでご覧になりますと、おからだじゅうは、もうすっかりべとべとにくさりくずれていて、くさい臭いいやなにおいが、ぷんぷん鼻へきました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
冗談じょうだんいわっし、おまえたもとくそなんぞけられたら、それこそ肝腎かんじんひとさしゆびが、もとからくさってちるわな」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ずつと以前いぜんさかのぼつて、弦月丸げんげつまる沈沒ちんぼつ當時たうじ實况じつけう小端艇せうたんてい漂流中へうりうちうのさま/″\の辛苦しんく驟雨にわかあめこと沙魚ふかりの奇談きだんくさつた魚肉さかな日出雄少年ひでをせうねんはなつまんだはなし
「富限者の子供は、いつも甘美うまかもの食いよっとじゃもの、あぎゃんくさったバナナば、恩にきせよる……」
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
次の六畳の天井は、煤埃すすほこりにまみれた古葭簀ふるよしずで、くされ屋根から雨がると、黄ろいしずくがぼて/\畳に落ちた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
するとすぐ、ぼそぼそというおとがして、たか大空おおぞらの上から、ながながくさなわがぶらがってきました。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「——A君は元気かい」「くさってるようだね」これまではいい。これは、どこででも聞かれる普通の会話だ。だが、それからきまって次のような言葉が追加される。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
だんだんその落葉の量が増して行って、私のくつがその中に気味悪いくらい深く入るようになり、くさった葉の湿しめがその靴のなかまでみ込んで来そうに思えたので
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
くされてゐたら、おんつぁんが……いつもさうだべ、なあ……額に汗をかき/\俺のものを綺麗に風呂敷に包んで、さあ出て行けと俺の坐つてゐるわきさ置いてよ
(新字旧仮名) / 有島武郎(著)
野菊やあざみはまだ青みを持って、黄いろく霜枯しもがれた草の中に生きている。野菊はなお咲こうとしたつぼみがはげしい霜に打たれてくさったらしく、小さい玉を結んでる。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ぎに草原くさはら濕地しつちは『腐植土ふしよくど』といつて、植物しよくぶつれて、えだくさつた肥料こやしになつてゐるようなつちみ、水分すいぶんおほいので、植物しよくぶつ生育せいいくには大變たいへん都合つごうがよいため
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
くされた野菜と胡蘿葡のごれたどぶどろのそばに、粗末な蓆の小屋をかけて、柔かな羽蟲のもつれをかなしみながら、ただひとり金紙に緋縅の鎧をつけ、鍬形のついた甲を戴き
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
眠元朗は女と、小さな家の、浜松のかげにある素朴な腰掛けに坐りながら、同じ窓さきにいる娘をみいみい、ほとんど居眠りと退屈とを相半ばするくされた時間を送っていた。
みずうみ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
山間僻地さんかんへきちのここらにしてもちと酷過ひどすぎる鍵裂かぎざきだらけの古布子ふるぬのこの、しかもおぼうさんご成人と云いたいように裾短すそみじか裄短ゆきみじかよごくさったのを素肌すはだに着て、何だか正体の知れぬ丸木まるき
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
何物にか執着しふぢやくして、黒くげた柱、地にゆだねたかはらのかけらのそばを離れ兼ねてゐるやうな人、けものかばねくさる所に、からす野犬のいぬの寄るやうに、何物をかさががほにうろついてゐる人などが
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
セーヌの河波かわなみの上かわが、しらちゃけて来る。風が、うすら冷たくそのうえを上走り始める。中の島の岸杭がちょっとむしばんだようにくさったところへ渡り鳥のふんらしいまだらがぽっつり光る。
巴里の秋 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
何日いつになつたつて我々われ/\けつしてすものか。』イワン、デミトリチはふ、『我々われ/\こゝくさらしてしま料簡れうけんだらう! 來世らいせい地獄ぢごくがなくてるものか、這麼人非人共こんなひとでなしども如何どうしてゆるされる、 ...
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
急に押さえて、すべらないくらいに、そっとつまむんだぜ。半分頭をつっこんだら、はなしちまえ。ちぎるといかん。切れた蚯蚓は、なんの役にも立たんのだ。第一、ほかのやつをくさらしちまう。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
如何いかにも人を食った、められようがくさされようが構わないと云った風な、度胸で舞っている感じがして、小面こづら憎くさえ思えるのであったが、でも考えれば、彼女は今年二十九と云う大年増で
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
叫べども人は來らず暗闇くらやみに足のかたよりくさり行く夢
和歌でない歌 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
ちりひぢに まみれくされて
髪切虫 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「あつしを殺せば、遺言状の隱し場所は誰にも判りやしません。番頭さんは殺されてしまつたし、遺言状は其のまゝくさつて了ひますよ」
それでの一ちやうはう晝間ひるまめたといふほど、ひどい臭氣しうきが、ころくさつた人間にんげんこゝろのやうに、かぜかれてつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
しかしこの骨角器こつかくきは、當時とうじにおいてはそのすうがたくさんあつたことでせうが、くさやすいために石器せつきのように今日こんにちおほのこつてをりません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
嗟乎あゝをしむべし、かゝる美人びじんこの辺鄙へんひうまれ、昏庸頑夫こんようぐわんふの妻となり、巧妻こうさいつね拙夫せつふともなはれてねふり、荊棘けいきよくともくさらん事あはれむたえたり。
このすなをすこしばかり、どんなもののうえにでもりかけたなら、そのものは、すぐにくされ、さび、もしくはつかれてしまう。
眠い町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
牛蒡ごばうもうつかりしてなはしばつてけちや、其處そこからくされがへえつてひでえもんだな、わらぽどきれえだとえんのさな」勘次かんじ横合よこあひからいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
くさ厩舎きゅうしゃの腐り馬とわらわれていた馬が見習騎手の鞭にペタペタしりをしばかれながらゴールインして単複二百円の配当
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
められたのか、くさされたのか分らない。気楽か気楽でないか知らない。気楽がいいものか、わるいものかかいしにくい。ただ甲野さんを信じている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)