惡戯いたづら)” の例文
新字:悪戯
江戸の噂の種を掻き集めて歩く八五郎は、生れながらの新聞記者で、好意と惡戯いたづらつ氣と、好奇心と洒落つ氣にち溢れてをりました。
しなには與吉よきち惡戯いたづらをしたり、おつぎがいたいといつてゆびくはへてせれば與吉よきち自分じぶんくちあてるのがえるやうである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
桃林和尚たうりんをしやうはそのはなしいてつてりましたから、いづれきつねがまたなに惡戯いたづらをするためにおてらたづねてたにちがひないと、すぐかんづきました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
しもなんぢがそれに署名しよめいしなかつたとすれば』とつて王樣わうさまは、『尚々なほ/\わるい、なんぢ惡戯いたづら相違さうゐない、さもなければ正直しようぢき署名しよめいしてくべきはづだ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
やがては墨染すみぞめにかへぬべきそでいろ發心はつしんはらからか、ぼうおやゆづりの勉強べんきようものあり、性來せいらいをとなしきを友達ともだちいぶせくおもひて、さま/″\の惡戯いたづらをしかけ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
が、惡戯いたづら氣分きぶんになつて、をつとかなかつた。そして、なほもはちからだにつつきかかると、すぐくちばし松葉まつばみついた。不思議ふしぎにあたりがしづかだつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
かう惡戯いたづらをする年頃としごろむすめもとよりのこと子供こども子供こどもそだげた經驗けいけんのない宗助そうすけは、このちひさいあか夜具やぐ尋常じんじやうしてある有樣ありさまをしばらくつてながめてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
偶然にも造花の惡戯いたづらによつて造られ、親も知らず兄弟も知らずに、蟲の啼く野の石に捨てられて、地獄の鐵の壁から傳はつてくる大地の冷氣にはぐくまれ、常に人生といふ都の外濠傳ひに
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「お前は唯の惡人らしくもねえが、——惡戯いたづらにしちや、少し念が入り過ぎるぜ。一體どうして人樣の物に手を掛ける氣になつたんだ」
それから數日間すうじつかん主人しゆじんうち姿すがたせなかつた。内儀かみさんは傭人やとひにん惡戯いたづらいてむしあはれになつてまたこちらから仕事しごと吩咐いひつけてやつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いかにそゝツかしい山家やまがねずみでも、そこにをんなひとはな間違まちがへて、おいもかなんかのやうにべようとしたなんて、そんなことはめつたにかない惡戯いたづらですから。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
られぬゑん血筋ちすぢといへばるほどの惡戯いたづらつくして瓦解ぐわかいあかつきおちこむは此淵このふちらぬとひても世間せけんのゆるさねば、いへをしくかほはづかしきにしき倉庫くらをもひらくぞかし
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「すべてが運命の惡戯いたづら……」
S中尉の話 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そのうちの幾つかは偶然の出來事であつたかも知れず、殘りの幾つかは、人手で行はれた、タチの惡い惡戯いたづらだつたかも知れないのです。
巫女くちよせとなへたことだけでは惡戯いたづらわかしゆ意志こゝろらない二人ふたりには自分等じぶんらがいはれてることゝはこゝろづくはずがなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わたしのやうなきつねでもうまかはつたやうになれば、うしてやしろ番人ばんにんをさせていたゞけるのです。わたしがもうわか時分じぶんのやうな惡戯いたづらきつねでない證據しようこには、このわたしくち御覽ごらんになつても分ります。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
吾助ごすけおもひてふを、後生ごしやう姉樣ねえさま返事へんじたまはれ、けつして此後こののちわがまヽもはず惡戯いたづらもなすまじければ、吾助ごすけ田舍ゐなかかへらぬやう、いままでどほり一しよあそばれるやう返事へんじたまはれ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
石川孫三郎の顏は硬張こはばりました。何と言はうと、どう誤魔化ごまかさうと、この惡戯いたづらは、屋敷内に住んでゐる者の仕業しわざでなければなりません。
この美登利みどりさんはなにあそんでる、あめるにおもてての惡戯いたづらりませぬ、また此間このあひだのやうに風引かぜひかうぞと呼立よびたてられるに、はいいまゆきますとおゝきくひて、其聲そのこゑ信如しんによきこえしをはづかしく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「そんな惡戯いたづらは今に始まつたことぢやないよ。命を取ると言つた奴が、昔から本當に命を取つたためしは無い。放つて置くが宜い」
十歳とをばかりのころまでは相應さうおう惡戯いたづらもつよく、をんなにしてはと母親はゝおや眉根まゆねせさして、ほころびの小言こごとも十ぶんきしものなり、いまはゝ父親てゝおや上役うわやくなりしひとかくづまとやらおめかけとやら
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「逢つてやらうぢやないか、お取次ぎに及ぶものか、——お粂さんの惡戯いたづらが過ぎるから、八五郎にまで嫌がられるぢやないか」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
れてやうとおもひましたけれどよひまどひでうにましたからそのまゝいてまゐりました、本當ほんたう惡戯いたづらばかりつのりましてきゝわけとてはすこしもなく、そとればあとひまするし
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「泳ぎ自慢の若旦那が、ふなばた俯向うつむきになつてゲエゲエやつて居るから、つい惡戯いたづらがして見度くなつたまでのことですよ、親分」
れだとおほきく父親ちゝおやこゑみちゆく惡太郎あくたらう惡戯いたづらとまがへてなるべし。
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「話はちよいと面白いが、それつきりぢや仕樣がない。お狐にしちや手數がかゝるから、いづれは誰かの惡戯いたづらだらう。提灯屋が喜ぶだけの事さ」
大の人間が一人、こんな恰好になつて死ぬためには、天狗の惡戯いたづらか、雲を踏み外した仙人か——そんな途方もないことでも考へなければなりません。
「だつて親分、觀音樣の境内ですつた紙入の中から出たんですぜ。巾着切にすられるのを當て込んで、惡戯いたづら書きの遺書を用意するものもないでせう」
いえ、それがほんの手ほどきで、それから、あらゆる惡戯いたづらと嫌がらせが始まりました。命に別條は無く、誰も怪我を
幸七の後ろには、好い男の手代良助、惡戯いたづら盛りらしい小僧の庄吉などが、不安と焦躁に固唾かたづを呑んで控へました。
お夢の怪我が大したことでないとわかると、振られた男の惡戯いたづらを、詮索立てする馬鹿/\しさをさとつたのでせう。
後ろから呼び留めたのは、小僧の孝吉——主人玄龍のもとの内儀の弟の、あの惡戯いたづらつ子らしい十四の少年でした。
その鬼の小左衞門にこんな可愛らしくて純情らしいめひがあるといふのは、何にか造化の神の大きな惡戯いたづらを見せつけれらるやうな氣がしないでもありません。
「よくある冗談じようだんだから、あつしはまだ行つてやらなかつたんです、そこで親分を呼出さうといふ惡戯いたづらでせう」
一と目見てきもをつぶし、——この間から見えないと思つた袷がこんなところにあつたのかねえ、誰が一體こんな惡戯いたづらをしたんだらう——と口惜しがつてゐました
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
滅茶々々に飜弄ほんろうした女、それは四千五百石取の大旗本の妾お勝が、たま/\奔放な野性のおもむくまゝ、名題の錢形平次をもてあそんだ積りの惡戯いたづらに外ならなかつたのでした。
お前も聞いた筈だ、昨夜ゆうべこのお屋敷の奧方がくなられたが——それは惡者の惡戯いたづらから起つたことだ。
先代の子なんだから可哀想でもあるが、この小僧は恐ろしく悧發で、惡戯いたづらつ子で手のつけやうはない
惡戯いたづらをした奴がありますよ、糸も針も滅茶々々だ。こんな掛けやうをされちや、竿さをがたまらない」
それは、佐野松さんの惡戯いたづらでした。私の牡丹刷毛を借りて、縁側にいた灰の上へけだものの足跡を拵へたのですが、それつきり私は、牡丹刷毛をしまひ忘れて歸りました。
萬一お里歸りの若夫婦に、惡戯いたづらでもされちや大變だから、あつしが頼まれて三日も見張つたわけで
町内の掛り付けの醫者も、毒死や縊死いしではなく、心の臟の持病で死んだに相違ないと言ふのだ。身體にはの毛で突いた程の傷もない。寺への投文は誰かの惡戯いたづらだらうよ。
傅次郎が庭のあたりの塀の外に來て、何にか惡戯いたづらをしてゐると判つたので、思ひきつてぶつかつて、話をきめようと思つたんです、——外へ出て見ると、良い月夜でした。
「子供の惡戯いたづらぢやございませんか。ものの機みで、何處からか飛んで來たと言つたやうな」
丸窓から入ると、主人はお仲が來たと思ひ込んで狸寢入たぬきねいりか何んかやつてゐたんだらう。そこを飛びついて一思ひに刺し殺し、ちよつと不動樣の劍に血をつけたのは飛んだ惡戯いたづらさ。
銭形平次捕物控:130 仏敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「武家の髷節なんざ、くさつたたけのこほども有難くねえが、一と晩にそいつを三つも四つも切つて落す手際が憎いぢやないか。縛る縛らないは別として、俺はその惡戯いたづら者のつら見度みてえよ」
弱氣の榮右衞門は、惡戯いたづらが、惡戯を見付けられでもしたやうに小さくなるのです。
多勢の雇人達が、いろ/\評議をして居る樣子ですが、結局誰の惡戯いたづらとも解りません。
錢形平次は縁側に寢そべつたまゝ、冬の日向ひなたを樂んで居りましたが、ガラツ八のもつともらしい顏を見ると、惡戯いたづらがコミ上げて來る樣子で、頬杖ほゝづゑを突いた顏を此方へねぢ向けました。
「その亡者の手紙は、誰かの惡戯いたづらに違ひないよ。色つぽい後家と、その矢並とか言ふ武家の仲をねたんで、そんな手紙を書いた、二本足の亡者があるんだらう。あんまり騷ぐと笑はれるぜ」