いで)” の例文
「それぢやその新聞が違つてゐるのだよ。阿父さんは先之さつき病院へ見舞にお出掛だから、間も無くお帰来かへりだらう。まあ寛々ゆつくりしておいでな」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「お互いに是は思い掛けない、縁と云うものは妙だ、国を出たのは昨年の秋で、貴方も国においでのないという事は人の噂で聞きました」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そこで土間どまつかへて、「ういふ御修行ごしゆぎやうんで、あのやうに生死しやうじ場合ばあひ平氣へいきでおいでなされた」と、恐入おそれいつてたづねました。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「ああ、妾が必然きっと連れて来て見せるから、温順おとなしくして待っておいで。え、それでもいやかえ。ねえ、お葉さん、確乎しっかり返事をおよ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
つひに其場へ切ふせたり斯て兩人はホツと一いきつく處へお里もやがかけ來り其所に御いでは父樣かといふ聲きいてオヽお里か能マア無事でと親子三人怪我けがのないのを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
召上つておいでで御座いました。重三さんがいきなり、お孃樣の御飯が、變な色だから、と急に止めなさるんです
こちらに御いでで遊ばしゃ遊ばしたで、是非にも御殿様でなくちゃというような事がいくらでもあるんです
大原さんの前に叔父おじさんだの叔母おばさんだの御両親だのがズラリと並んで大原さんに何か言っていると、大原さんはただモー閉口した御様子で下ばかり向いておいででした。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「だけど、阿母おつかさん、そりや阿父おとつさんが生きておいでだツたら、此様に世帶せたいの苦勞をしないでゐられるかも知れないけれども、其のかわりまた何様な苦勞かあるか知れたもんじやないのね。」
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
修「幸三郎さんはたしか霊岸島辺においでになって、其の頃はお独身ひとかたのよう承わりましたが、只今では御妻君をお迎えになりましたか」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「さやうでございますよ、年紀としごろ四十ばかりの蒙茸むしやくしや髭髯ひげえた、身材せいの高い、こはい顔の、まるで壮士みたやうな風体ふうていをしておいででした」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
お稲ちゃんは、またそんなでいて、しくしく泣き暮らしてでも、おいでだったかと思うと、そうじゃないの……精々せっせ裁縫おしごとをするんですって。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
の女がここのかどくぐった所を見ると、妾は何日いつでも押掛おしかけて来て、頭の毛を一本一本引ッこ抜いてるから、う思っておいでなさい。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
妻君その様子のあわてたるを笑い「ハイ来ておいでです、モシお登和さん」と振返りて呼びけるにお登和も詮方せんかたなく座敷へ入りしが心にはばかる事ありけん、余所余所よそよそしく大原に黙礼せしのみ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
などゝいふから、益々ます/\国王こくわう得意とくいになられまして、天下てんかひろしといへども、乃公おれほどの名人めいじんはあるまい、と思つておいでになりました。
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
浅草に餓鬼大将をやっておいでの時とは違って、品もよくおなりだし、丸顔も長くなってさ、争われない、どう見ても若殿様だ。立派なもんだ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いづれ敵手あひて貸金かしきんの事から遺趣を持つて、その悔しまぎれに無法な真似まねをしたのだらうつて、大相腹を立てておいでなのだよ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
で、その後もかくにの窓からちる人があるので、当時いまの殿様もひどくそれを気にかけて、近々ちかぢかうちにアノ窓を取毀とりこわして建直たてなおすとか云っておいでなさるそうですよ
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
はたして大原は早くも見咎めぬ「そこにおいでのはお登和さんでありませんか」
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
もっともことのついでに貴方のお噂がござりませんと、三年ごし便たよりは遊ばさず、どこに隠れておいでなさりますか、分りませんのでござりました。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ついおっくうがっておいでなさるから、今日はわっちがお連れ申しましたが、どうか七年あとの十月の二日にお預け申した三千円の金はお返しなすって下さい
幾らお前が強情を張った所で、一旦ここへ連れて来た以上は、もう帰す気配きづかいはないから、其意そのつもり悠々ゆっくりしておいで。夜も寒くないように、毛皮も沢山用意してあるから……。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
暮に良人やどが中川さんへ参ったら中川さんがお引合せなすったそうです。お国は長崎で料理の事は大層進んでいるところですのにそのお妹子さんは神戸や大阪においででよほど料理がお上手だそうです。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
御自分じゃちゃんとしておいで遊ばすのでございましょうけれども、どうやらお心がたしかじゃないようにお見受申します。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ことに子供まで出来十八九ともなっているとは解らぬ事だと、目を閉じて考えておいでになると、勝五郎は短銃を貸せ、打って仕舞うからとせきたてます。
いや、何事も無かつたと答へると、実はうちは昔から有名なだいの化物屋敷、あなた方が住んでおいでの時に、そんな事を申上げてはかえつて悪いと、今日こんにちまで差控さしひかえてりましたと云ふ。
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
幸「それはどうも、で其の東京におあにいさんが逃げてしまっても、お母様っかさまがおいでなさるか、お母様はさぞお驚きで」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
場所が場所で、扱う人が扱う人だけ、その時は今思うほどでもなかったが、さてこう枕許まくらもとにずらりと並べて、穏かな夢の結ばれそうな連中は、御一方もおいでなさらぬ。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
足利七代の将軍義尚よしひさの時まで世を茶にしておいでなされた一休が、杉葉たてたる又六またろくかどと仰せられたも酒屋で、杉の葉を丸めて出してある看板だそうにございます。
「構うもんか、内の夫人おくさんも御隣のも呑込んでおいでなさるるから可い、そこで帯をお解きといったんだ。そのままじゃあおちが来ないよ。そうして思切って髪もこわしな。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此のお方がまだ芳野へおのりこみにならぬ前、磐城いわきと申す軍艦においであそばし品川に碇泊ていはくなされまする折、和国楼で一夜の愉快をつくされましたときに出たのが花里で
仔細しさいあって、てまえは、この坂を貴辺あなた真暗三宝まっくらさんぼう駆下りましたで、こちらのこの縄張は、今承りますまで目にも入らず、貴辺がおいでなさる姿さえ心着かなんだでござります。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あなたがこれにおいでになると御心配になりますから、おかやを連れてばあやの所へでもおいでなすって
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
婆さんに聞きました心積こころづもり、学生の方が自炊をしておいでと云えば、土瓶か徳利とっくりに汲んで事は足りる、と何となく思ってでもおりましたせいか、そのどうも水を汲む音が
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
草葉の蔭においでなさるお母様にお目に掛りまして不孝のお詫を致しますから、どうぞおゆるし下さい
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
名高い医学士でおいでなさるから一ツ河野さんの病院へ入院してはどうか、余所よそながらお道さんのお顔を見られようから、と云いましたが、もっての外だ、ときません。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
幸「關善さんへは帰る時話をして、今パッと話すと面倒だから……それから貴方の身の上だけはお母様っかさんにお逢わせ申しますが、お母様っかさま矢張やっぱり東京においででございますか」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「お師匠さんでなくってもいんです。お弟子さんがおいでなら、ちょいと結んで下さいな。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お前さんがお独身ひとりみでおいでならおっかさんぐるみ引取って女房に貰いたいと話をしにあげた所が、もう粥河圖書と云う人へ縁組が出来たと聞きましたから、それは結構な事だ
腹帯にはちっと間が在ったもんだから、それなりに日がって、貴女は九月児ここのつきごでおいでなさる。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私も驚きました、御慈悲深い、お情深い、殊に仏学をお修めなすって、道徳抜群という風説うわさの高い貴女のお嫁御があんなに薄命でおいでなさろうとは、はい、夢にも思いはしませんでした。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
商法を始めるのにいて高利を借り三千円の金を持って東京へ買出かいだしに出て来て、馴染なじみの宿屋もねえ事ですから、元前橋で御重役をなすった貴方あなたが、東京へ宿屋を出しておいでなさるから
「戻ってまた教えてげよう。お前がおいででちょうど可い。誰も居ないから留守しておくれ。わたしはね、この御薬を持って裏のお婆様ばあさんの処へちょいと行って来る。」「あいあい。」とうなずけば
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
段々とお尋ね申した末に、漸くお名前も知れたから早速お知らせ申すが、御無事でおいでだから御心配をなさるな、明日みょうにち此方こちらからお娘子を連れて参るから前以てお知らせ申すと早く行って来な
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お前のお花主とくいの、知事の嬢さんが、よく知っておいでだろうが、黒百合というのもやっぱりその百合の中の一ツで、花が黒いというけれども、私が聞いたのでは、真黒まっくろな花というものはないそうさ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わたくしの母は他に子と申すがありませんから、他家わきへ嫁にまいる身の上ではございません、貴方は衆人ひとに殿様と云われる立派なお身の上でおいで遊ばすのに、私のようなはしたない者を貴方此様こんな不釣合で
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
とても覚えてなぞおいでなさらないと存じました。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「こうやって威張いばっておいでよ。」
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「かうやつて威張ゐばつておいでよ。」
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)