黒主くろぬし)” の例文
天下を望む大伴おおとも黒主くろぬしと来りゃあ、黒だって役がいいわ。まあ、そんなことより、これ、これ……。(びんをみせる。)又こんなものを頂いたのよ。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
素性が言へずば目的でもいへとて責める、むづかしうござんすね、いふたら貴君あなたびつくりなさりましよ天下を望む大伴おほとも黒主くろぬしとは私が事とていよ/\笑ふに
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
大坪家に二十年以上も住んでいる人間ですから、渡り用人並に、少しくらいは溜めていたところで引抜いて大伴おおとも黒主くろぬしなどに化ける気遣いはまずなさそうです。
なるほど、十五年前に墨書すみがきし、その後十五年間びんの中に水を張ったのでは、大伴おおとも黒主くろぬしの手を借らずとも、今日5098の文字は消え失せているに違いなかろう。
こりゃてっきりお角が指したのだ、お角の方寸で我々をその筋へ密告したのに違えあるめえ——そうだ、道庵は袋の鼠、お角こそ大伴おおとも黒主くろぬし、あいつが万事糸をひいている
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
申すまでもないことでげすが墨染とはお芝居なんぞの中幕によくるあのせきでげすな、大伴おおとも黒主くろぬしが小町桜の精に苦しめらるゝ花やかな幕で、お芝居には至極結構なもので
「もしやおまえが、天下を狙う、大伴おおとも黒主くろぬしなら、おれも片棒かついでやろうかと、とうから心をきめているのだ。どういうものか、はじめて顔を見たときから、他人と思われなくなったのが因果さ」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
素性が言へずは目的でもいへとて責める、むづかしうござんすね、いふたら貴君あなたびつくりなさりましよ天下を望む大伴おほとも黒主くろぬしとはわたしが事とていよいよ笑ふに
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そこで先づ何んとなく上品で美しいお玉に當つて見ると、こいつは飛んだ大伴おほとも黒主くろぬしで、すぐ宇三郎に喰ひ下がつて、年の違ひも忘れて妙な仲になつてしまつた。
こいつも大伴おおとも黒主くろぬしに近いが、果して、さほどの大望を抱いて来たのか、或いは、山科の骨董商になりきって、このおやしきのお出入り商人たるを以て甘んじて御用伺いに来たものか
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
素性すぜうへずは目的もくてきでもいへとてめる、むづかしうござんすね、いふたら貴君あなたびつくりなさりましよ天下てんかのぞ大伴おほとも黒主くろぬしとはわたしこととていよ/\わらふに
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「だから、謀叛人、綺麗な顏はしてゐるが、飛んだ大伴おほとも黒主くろぬしぢやありませんか」
「だから、謀叛人、綺麗な顔はしているが、とんだ大伴おおとも黒主くろぬしじゃありませんか」