あぎと)” の例文
看板の魚は、青笹あおざさの葉をあぎとにはさんだたいであった。私達は、しばらく、その男達が面白い身ぶりでかまぼこをこさえている手つきに見とれていた。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
実をいふと、氏はその日川の容子ようすを見に出掛けたので、魚籠びくの用意だけはしてゐなかつた。で、兵児へこ帯を縦にいてうをあぎとくゝつて、その儘水におよがせておいた。
たらたらとうるしのような腹を正的まともに、こうらに濡色の薄紅うすべにをさしたのが、仰向あおむけにあぎと此方こなたへ、むっくりとして、そして頭のさきに黄色く輪取った、その目がなかだかにくるりと見えて
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
跣足はだし柳条りうでうに魚のあぎと穿うがつた奴をぶらさげて川から上つて来たらしい漁夫もあり、柳がところ/″\に翠烟すゐえんめてゐる美しい道路を、士農工商樵漁せうぎよ、あらゆる階級の人〻が右往左往してゐる。
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
六がけで話がまって、小使がそこにおけばちとを運んで来た。ピンとするほどはかりをまけた鮒はヒクヒクとあぎとを動かしている。おやじはやがてぜにを受け取って軽くなった笭箵びくをかついで帰って行く。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
お前のあぎとに黒金の覆輪があり
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
跣足はだし柳条りゅうじょうに魚のあぎと穿うがった奴をぶらさげて川からあがって来たらしい漁夫もあり、柳がところどころに翠烟すいえんめている美しい道路を、士農工商樵漁しょうぎょ、あらゆる階級の人〻が右徃左徃うおうさおうしている。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
薄きあぎとにくだきては
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)