高直こうじき)” の例文
本朝にも弥勒の平等世界を唱えて衆を乱した事歴史に見ゆとは何を指すのかちょっと分らぬが、『甲斐国妙法寺記』に、永正三丙寅ひのえとら、この年春は売買去年冬よりもなお高直こうじきなり。
この頃は諸式高直こうじきのために、江戸でもときどきに打毀うちこわしの一揆が起った。現にこの五月にも下谷神田をあらし廻ったので、下町したまちの物持ちからはそれぞれに救い米の寄付を申し出た。
半七捕物帳:20 向島の寮 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
今年ばかりは御様子が、がらりと違ふた淋しさは、恐ろしいもの、諸式の高直こうじき。このお邸にも響いたさうなと。外から見えぬ内幕を。幕の内では婢ども、二人三人が、こそこそ話。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
玄「ところが愚老の穿く草鞋は高直こうじきだによって、二百疋では何うも国へも帰られんて」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そのようなる事をいたしおりてもつまりは時節が悪いなどと申し腰掛へ多分罷出で、かみへ御苦労相掛け候者これ有り。時節悪しきにてはなし、分限ぶんげんを忘るる故諸色しょしき高直こうじきに相成るなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
一匁いくらという高直こうじきのお身おからだをのせながら、右に御台みだい、左に簾中れんちゅう、下々ならばご本妻におめかけですが、それらを両手に花のごとくお控えさせにあいなり、うしろには老女、おつぼね
何でも物価高直こうじき折柄おりから、私のいれる食料では到底とてまかない切れぬけれど、外ならぬ阿父おとっさんのたっての頼みであるに因って、不足の処は自分の方で如何どうにかする決心で、謂わば義侠心で引受けたのであれば
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
だが千円はすこぶ高直こうじきだ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)