騒然そうぜん)” の例文
旧字:騷然
城中はどことなく騒然そうぜんとして、出征の身支度をした将士が、武者溜むしゃだまりにもいっぱい見えたし、諸門の口や廊下にも駆け歩いていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ながから細君の声で兼吉はほうきをおいて走っていく。五郎はまぐさをいっせいに乳牛にふりまく。十七、八頭の乳牛は一騒然そうぜんとして草をあらそいはむ。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
奥の方に通り抜け、私の席についた。食器に麦酒がトクトクとつがれるのを眺めながら、私は此の騒然そうぜんたる雰囲気に何か馴染なじめない気がした。卓が白い泡で汚れている。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
これで気がついたように、今まで黙りこくっていた五人の間に、一時に騒然そうぜんと声が起った。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
騒然そうぜんたる中学校の教室の音響——「やい亀井かめい」「なんだ松岡」「随分ずいぶん黒いぞ」「黒くておかしいかい。やい白ん坊」「なんだ黒ん坊」などの早い会話のやりとりを遠く聞かせる。
新学期行進曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
五大洲がバットをふったかと見ると球は左翼の頭上はるかに飛んだ、外野手は走った、内野手も走った、陣営騒然そうぜんとみだれた、小原はあっけに取られてマスクをぬぎ捨てたまま本塁に立っている。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
をながした以上いじょう大講会だいこうえ中止ちゅうしはやむをえないことだが、徳川家の武士ぶし石見守いわみのかみ家来けらいたちは、まだ騒然そうぜんとむれて、そこをらなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と下では、騒然そうぜんうずをまいた。その白刃の林をめがけて、ほのおのなかから、ひらりと飛びおりた伊那丸と龍太郎——
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、顔を合わせるごとに、信じ得ぬもののように確かめ合っては、各所で騒然そうぜんたる声を起していた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここまではほとんど後先あとさきなく、一斉いっせいにかたまって来た堀秀政の隊、中村孫兵次の隊、堀尾茂助の隊なども、忽ち分散して、あなたこなたに、石ころを落し、灌木かんぼくを掻き分け、騒然そうぜん
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(昨夜来、柴田、佐久間などの営中、何となく騒然そうぜん不審ふしんに候う)
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)