食堂じきどう)” の例文
ここの食堂じきどうはこの寺の大部の伽藍と同様に国宝ですが、恐らくかつてはこの場所で隠元豆を食べたであらう彼などを甚だ想像しやすいのは
女占師の前にて (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
しかもその間、主上には寺の食堂じきどうを政庁にてられ、寒日も火なく、炎日もおいこいなく、政務をおとり遊ばしていたとやら。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寺はその森に沿った石段の上にあり、本堂、講堂、食堂じきどう、客殿、宝蔵などのほかに、三重の塔もあって、近国でも名刹めいさつの内にかぞえられていた。
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
なお大仏殿のうしろには、大講堂を初め、三面僧房、経蔵きょうぞう鐘楼しょうろう食堂じきどうの類が立ち並んでいる。講堂、食堂などは、十一間六面の大建築である。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
拾われて参ってから三年ほど立ちましたとき、食堂じきどうで上座の像に香を上げたり、燈明を上げたり、そのほかそなえものをさせたりいたしましたそうでございます。
寒山拾得 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そのうちに食堂じきどう、つづいて講堂も焼け落ちたらしく、火の手が次第に仏殿に迫って参ります頃には、そこらにちらほら雑兵ぞうひょうどもの姿も赤黒く照らし出されて参ります。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
晨朝じんちょうの勤めの間も、うとうとして居た僧たちは、さわやかな朝の眼をみひらいて、食堂じきどうへ降りて行った。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
五仏堂だの、薬師堂だの、食堂じきどうだのの堂塔のあいだをめぐって坊舎からすこし離れると、そこに金堂こんどうと多宝塔があった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
養生所へ帰ったのはちょうど夕食の時刻で、登は洗面し着替えをすると、森半太夫に声をかけて食堂じきどうへいった。
そのうちに食堂じきどう、つづいて講堂も焼け落ちたらしく、火の手が次第に仏殿に迫つて参ります頃には、そこらにちらほら雑兵ぞうひょうどもの姿も赤黒く照らし出されて参ります。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
また彼方の求聞持堂ぐもんじどう護摩堂ごまどう、大師堂、食堂じきどう丹生高野にうこうや神社、宝塔、楼門など、ほぼ一望にすることができましょう
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
午後二時の茶のとき、登は半太夫と食堂じきどうへゆき、いっしょに茶と菓子を食べた。そのとき半太夫はおゆみという狂女が危篤で、「もう十日とはもつまい」と告げた。
登は食堂じきどうへいって茶を啜り、それから去定の部屋へいった。去定は上衣を着替えながら、登の話を黙って聞いてい、次に机へ向かって、その日の調剤を書き始めた。
奴もきっと今ごろは、もうすっかり往生して、食堂じきどうかゆでも食べているでしょうよ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
養生所へ帰ると、ちょうど食堂じきどうの終ったときで、森半太夫だけが残ってい、登はその隣りに坐った。
秋ノ坊は、食堂じきどうから北の方にある一建物で
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ようやく手当が終り、けが人の容態がおちついたので、二人は食堂じきどうへ茶を飲みにいった。するとそこへ、おかねという女が待っている、と知らせに来た。登は眼をみはった。
食堂じきどうは八時に閉まるので、それ以後は賄所へいくよりしかたがなかったのである。
番医の詰める部屋からはじめて、かよい療治の者を診察する表部屋、薬の調合をする部屋、入所患者のための配膳所、医員の食堂じきどうなどを見たあと、津川は南の口から、庭下駄をはいて外へ出た。
そして彼は食堂じきどうを出た。