頬冠ほゝかむ)” の例文
庇間合ひあはひ捨置すておき早足はやあし逃出にげいだし手拭ひにて深く頬冠ほゝかむりをなしきもふとくも坂本通りを逃行くをりから向うより町方の定廻り同心手先三人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それから、幸七が頬冠ほゝかむりの男の話をしたのは、若旦那の傳四郎に疑ひをきせようとした細工だが、あれは大縮尻おほしくじりさ。
その折屋敷の主人あるじは二三人の下男しもをとこを相手に、頬冠ほゝかむりに尻を端折はしをつて屋根を這ひ廻つてゐた。
頬冠ほゝかむりも取らずに、格子の外で二つ三つお辭儀する卑屈ひくつらしさが、妙にお靜を焦立いらだたせます。
そして病人に手拭てぬぐひできつく頬冠ほゝかむりをさせて裏口まで連れ出した。背戸せどには小流こながれ可笑をかしさにたまらぬやうに笑ひ声をたてて走つてゐた。医者は病人をそのふちに立たせてかういつた。
暫く私も眼をらして、違つた方角を眺めて、ヒヨイト眼を返すと、頬冠ほゝかむりをした中年の男が座敷から庭へ飛び降りて、追つかけられるやうに裏の方へ駈けて行くぢやありませんか
鼓村氏は二三日その友人のとこで遊んだ。帰途かへりにその渡し場を通ると、矢張り同じ船頭が待つてゐて、慌てて頬冠ほゝかむりを取つた。その瞬間鼓村氏は二三日前の悪戯いたづらを思ひ出した。で、しかつべらしく言つた。
「其處に居る野郎で、——やい三次、此處へ來て挨拶をしな。錢形の親分さんが訊きてえことがあるとよ、——あれ、あんな野郎だ。頬冠ほゝかむりをしたまゝ顎をしやくるのは、手前の辭儀じぎかい」
医者は急いで頬冠ほゝかむりをとつて、病人の顔を覗き込んだ。
さうですね、——さう言へば、一人、若い男が——頬冠ほゝかむりを
「いや、明るいやうでも、月の光の下では、見違へることがあるものだ。頬冠ほゝかむりでもすると、華奢きやしやな若旦那と、十六の丁稚品吉は、間違へられないものでもあるまい。おや物置の前に下男の嘉七が居るぢやないか、訊いて見よう」