霊南坂れいなんざか)” の例文
やがて、そこの地域をぬける、淋しい溜池下ためいけしたである。それを右手に、唖は、霊南坂れいなんざかを登って、やがてまた、飯倉いいぐらの屋敷町の方へだらだらと降りた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
霊南坂れいなんざかを登る時、米国大使館の塀外を過ぎても、その頃には深夜立番たちばんしている巡査の姿を見るようなことはなかった。
枇杷の花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その頃に困難を極めていた借家探しの方もやっとらちがあいたらしく、まず希望どおりの家が赤坂の霊南坂れいなんざか付近に見付かったという話を聞いたのであった。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
真佐子は、霊南坂れいなんざかまで来て、そこのアメリカンベーカリーへ入るまで、復一を勇気付けるように語り続けた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
どうしたつてえぢやアえか、昨日きのふ年始𢌞ねんしまはりだ、あさうちを出て霊南坂れいなんざかあがつて、麻布あざぶへ出たんだ、麻布あざぶから高輪たかなわへ出て、それからしばかへつてて、新橋しんばしを渡り、煉瓦通れんがどほりを𢌞まはつて神田かんだへ出て
年始まはり (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
いとまを告げたが樹木の多い霊南坂れいなんざか付近の家々はもうすっかり深い眠りに就いてしまったと見えて
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
されば麻布に移ってよりわたしは毎年人より早く秋に感ずる機会が多い訳である。霊南坂れいなんざかを降りかけると米国大使館の塀際に立っている公孫樹いちょうの黄葉がはらはらと人のおもてを撲つ。
写況雑記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
えゝはじたくを出まして、それから霊南坂れいなんざかあがつて麻布あざぶへ出ました、麻布あざぶから高輪たかなわへ出まして、それからしばかへつてて、新橋しんばしを渡り、煉瓦通れんがどほりを𢌞まはりまして、京橋きやうばしから日本橋にほんばしから神田かんだへ出ましてな
年始まはり (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)