雛菊ひなぎく)” の例文
そして朝日の光を頭に浴び、眠りの足りた薔薇色ばらいろの顔をし、心沈める老人からやさしくながめられながら、雛菊ひなぎくの花弁をむしっていた。
それであいちやんは、なぐさみに雛菊ひなぎく花環はなわつくつてやうとしましたが、面倒めんだうおもひをしてそれをさがしたりんだりして勘定かんぢやうふだらうかと
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
雛菊ひなぎく釣舟草つりぶねさうひゆの花、もつと眞劍のまよはしよりも、おまへたちの方がわたしは好だ。ほろんだ花よ、むかしの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
彼もまた雛菊ひなぎくからその眼をあげて彼女を眺めた。それは笑ひもしない、さぐるやうな意味ありげな眼であつた。彼女はそれに對して、また、笑つて、それに答へた。
彼は壁際かべぎわによって、そこの窓を開けてみた。窓のすぐ下に花畑があって、スミレ、雛菊ひなぎく、チューリップなどが咲きそろっていた。色彩の渦にしばらく見とれていると、表から妹が戻って来た。
永遠のみどり (新字新仮名) / 原民喜(著)
「そうだね。本当にそうだね。瑠璃子さんは、雛菊ひなぎくの様に無邪気な乙女だね」
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
金鳳花きんぽうげ、いらくさ、雛菊ひなぎく、それから紫蘭しらん、あの、紫蘭の花のことを、しもじもの者たちは、なんと呼んでいるか、オフィリヤは、ご存じかな? 顔を赤くしたところを見ると、ご存じのようですね。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
雛菊ひなぎくの花弁をむしり取ることはすなわち愛情を摘むことだなどとは、夢にも思っていなかった。
彼はもう既に美しい少女から眼をらせて、門の傍に生えてゐた小さな雛菊ひなぎくの叢を見てゐた。
雛菊ひなぎく、指で隱したおまへのその眼のしをらしさ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ダリアの季節であるか雛菊ひなぎくの季節であるか、リュクサンブールの園はテュイルリーの園よりも美しいかどうか、洗たく屋が持ってきたシャツはのりがききすぎているか足りないか
はら一面いちめん雛菊ひなぎく
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)