雅味がみ)” の例文
いっこうに風流雅味がみのこころを動かされるふうもなく、きょうも先刻から、とうのむかしに抱きこんである老婆さよを呼び入れて
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
雅味がみのある絵を上手に墨で描いて、からだを横たえながら、次の筆のろしようを考えたりしている可憐かれんさが御心みこころんで、しばしばこちらへおいでになるようになり
源氏物語:17 絵合 (新字新仮名) / 紫式部(著)
その場所は恐らく風流心のないチベット国人がこしらえた場所としては実に雅味がみのある所で、私は三大寺共に見ましたが、この法林道場ほど風雅な景色に富んで居る所はない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
絶頂の苔蒸こけむして、雅味がみんだ妙見の小さな石の祠のあるあたりには、つつじの株最も多く、現在では蛍袋ほたるふくろおびただしく花をつけており、しもつけもまだのこんの花を見せている。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
一、滑稽こっけいもまた文学に属す。しかれども俳句の滑稽と川柳せんりゅうの滑稽とはおのずからその程度を異にす。川柳の滑稽は人をして抱腹ほうふく絶倒せしむるにあり。俳句の滑稽はその間に雅味がみあるを要す。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
富士の斜面のヒダは、均整せられて、端然たる中にも、その高いところは光を強く受けて、浮彫につまみ上り、低い裂け目には暗い影が漂っている。全体としては、素焼の陶器の雅味がみである。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
身どもは大阪表のある蔵屋敷づめの者であるが、同僚たちと語らって、何ぞ趣向しゅこうの変った連歌れんがの催しをやりたいというところから、この山の額堂ならば、雅味がみもあり、静かなことはこの上もないので
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その法林道場のずっと上手うわてを見ますと巌山がんざん突兀とっこつそびえて居て、その岩の間に流水が日光に映じた景色けしきは実に美しく、そういう天然の景色に人為的雅味がみを付け加えたのですから
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)