雁股かりまた)” の例文
そうして、森からは弓材になるまゆみつきあずさが切り出され、鹿矢ししやの骨片の矢の根は征矢そや雁股かりまたになった矢鏃やじりととり変えられた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
雪道を雁股かりまたまで、棒端ぼうばなをさして、奈良井川の枝流れの、青白いつつみを参りました。氷のような月が皎々こうこうえながら、山気が霧に凝って包みます。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
相手をおびき出すためであった。しかるに相手は動かない。左右に踏ん張った二本の足が、鉄で造られた雁股かりまたのように、巌然がんぜんと床から生え上がっていた。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あの矢のをいろいろに工夫するのだがネ、どうしても雁股かりまたはよくいかない。何故というのに雁股は僕の所謂いわゆる最も障碍の少きは螺旋的運動なりという原則に反対しているからだ。
ねじくり博士 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その、大蒜にんにく屋敷の雁股かりまたへ掛かります、この街道かいどう棒鼻ぼうばなつじに、巌穴いわあなのような窪地くぼちに引っ込んで、石松という猟師が、小児がきだくさんでもっております。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
村入りの雁股かりまたと申すところに(代官ばば)という、庄屋しょうやのおばあさんと言えば、まだしおらしく聞こえますが、代官婆。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)