陸奧みちのく)” の例文
新字:陸奥
直ぐに其の音を打消す他の響が傳はる。これは不來方こずかた城畔の鐘樓から、幾百年來同じ鯨音おと陸奧みちのくそらに響かせて居る巨鐘の聲である。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
智山 拙僧は高野の山にすむ智山と申す者、諸國修行のために陸奧みちのくへ下り、歸り途には鎌倉より伊豆をめぐりて、これより歸山の道中でござる。
佐々木高綱 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
先年陸奧みちのくの戰ひに餓ゑて人の肉を食つて以來、鹿の生角いきづのさへ裂くやうになつたと云ふ強力の侍が、下に腹卷を着こんだ容子で、太刀を鴎尻かもめじりらせながら
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
よし一時いちじ陸奧みちのく名取川なとりがはきよからぬながしてもし、はゞかりのなか打割うちわりてれば、天縁てんえんれにつて此處こヽはこびしかもれず、いまこそ一寒いつかん書生しよせいもなけれど
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
陸奧みちのく十綱とつなはしつな
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さもこそ似たれ、陸奧みちのく
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
あるじの能因は陸奧みちのくの旅に出て、まだ歸らぬとか聞いてゐるが、誰か留守居の者があらう。
能因法師 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
卒ざ陸奧みちのくにありといふ關の人目にと絶えを詫るは優しかるべし、懸けつかけられつ釣繩のくるしきは欲よりの間柄なり、一人は誠の心より慕ふともよりあはねば是れも片糸の思ひやすらん
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)