くっ)” の例文
その美しいかおだちをもった、まだ十七八の少女の顔が、殊更ことさら、抜けるように白く見え、その滑かな額には、汗のようなあぶらが浮き、降りかかった断髪が、べっとりとくっついていた。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
正的まともに町と町がくっついた三辻みつつじの、その附根つけねの処を、横に切って、左角の土蔵の前から、右の角が、菓子屋の、その葦簀よしず張出はりだしまで、わずか二間ばかりのあいを通ったんですから、のさりとくのも
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「どして、っていうと困るが、つい一ト月ぐらい前にね、ここで訓練した軍用犬にくっついて国境の方まで行って見たんだが、あの辺にも相当この病気が流行はやっているらしかったぜ」
睡魔 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
その心地ここちもいわれなさで、眠気ねむけがさしたでもあるまいが、うとうとする様子で、きずの痛みがなくなって気が遠くなって、ひたとくっついている婦人おんなの身体で、わしは花びらの中へ包まれたような工合。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)