)” の例文
物馴れた手先ふたりが半七を先に立てて再び両国へむかったのは、短い冬の日ももう暮れかかって、見世物小屋がちょうどねる頃であった。
半七捕物帳:02 石灯籠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「では、今夜は、根岸の鶯春亭おうしゅんていでまっていますほどに、ねたらすぐにまいッてくれ。乗りものを待たせて置きますぞ」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
芝居が大事だからねるまで隠しておこうという説が多かった。しかし、支配人はイダルゴの気質を飲み込んでいた。
この舞台いたに端役ながらも綺麗首を見せていた上方下りの嵐翫之丞という女形おやま、昨夜ねてこやを出たきり今日の出幕になっても楽屋へ姿を見せないので
午後十一時半にねる活動写真館から五色のターバンを巻いた楽士達が通用門から出る時刻であった。
孟買挿話 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
昨日までは宵からねるまで一軒の寄席に居座っていて、あとからあとからやってくる芸人たちの下駄を直し、お茶を汲んで出し、みんなの羽織を畳み、帰る人には着せかけてやり
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
東京隅田川の水辺に近い座敷で静な三味線しゃみせんを聞くのを楽しみにしたと同じ心持で、巴里の劇場のねる頃から芝居帰りの人達が集まる楼上に西班牙スペイン風の踊なぞを見るのを楽みにすることもあった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ところで、きょう両国の小屋がねたのは何刻ごろだ」
芝居がねると、招宴をことわって、宿に戻り、じっと灯の下に腕を組んでいたのであったが、女中が来て
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
芝居のねたのはもう九ツ(夜の十二時)をすぎた頃で、一座のものは楽屋に枕をならべて寝た。
半七捕物帳:38 人形使い (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
芝居がねてからの芝居でありまするが、つまり巴里パリーじゅうの有名な女優たちが、木戸を打ってから此家ここあつまりまして、特に皆さんのために珍しい舞踏をお眼にかけようというのであります。
けてはかえって失礼ではありましょうが、昼間、わが時のないからだ——今宵こよい芝居がねましたら、お門口までなりと、まかり出たいと申しておりましたそうで——何とまあ、御恩を忘れぬ
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
ねて出ると、高い劇場の破風はふに、有名な四頭の馬がひく戦車の彫刻が、夜の雲をめざして飛ぼうとしていた。露のおりた石の道を馬車で帰る。霧のなかから浮かび出て霧へ消える建物。ひづめの音。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)