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鎭守府
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ちんじゆふ
あゝ、
其のよろこびの
涙も、
夜は
片敷いて
帶も
解かぬ
留守の
袖に
乾きもあへず、
飛報は
鎭守府の
病院より、
一家の
魂を
消しに
來た。
さて、
取るものも
取りあへず
福井の
市を
出發した。これが
鎭守府の
病院に、
夫を
見舞ふ
首途であつた。
棄てゝ
行くには
忍びぬけれども、
鎭守府の
旦那樣が、
呼吸のある
内一目逢ひたい、
私の
心は
察しておくれ、とかういふ
間も
心は
急く、
峠は
前に
控へて
居るし、
爺や!