鈍重どんじゅう)” の例文
廊下ろうかが急にさわがしくなった。講義が中休みになったらしい。やがて小川先生がのっそりはいって来て次郎の横にこしをおろし、その鈍重どんじゅうな眼で、じっとかれの顔を見つめた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
黄色きいろなくちばし、その鈍重どんじゅうなからだつき、そして、たえずものおじする、つぶらなくろると、いじらしいというかんじをさせられた。わたしは、このとりをきらいでなかったのです。
自由 (新字新仮名) / 小川未明(著)
氏は、取りすました花蝶かちょうなどより、妙に鈍重どんじゅうな奇形な、昆虫などに興味を持ちます。
越後屋佐吉というのは、四十を越したばかりの、北国者ほっこくものらしい鈍重どんじゅうなうちに、なんとなくしたたか味のある男ですが、女房が不思議な殺されようをしたので、さすがに、すっかり度を失っております。
船待ふなまちにしては長過ぎるし、多少寝たには違いないが、絶えず気を張っているので、頭も鈍重どんじゅうになっているところへ、船出祝ふなでいわいに出された酒も少しは飲んでいたので、思わず、居眠りも出たというわけ。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
牛丸平太郎は牡牛おうしのような鈍重どんじゅうな表情でうなずいた。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
先代大隅太夫おおすみだゆうは修業時代には一見牛のように鈍重どんじゅうで「のろま」と呼ばれていたが彼の師匠は有名な豊沢団平俗に「大団平」と云われる近代の三味線の巨匠きょしょうであったある時蒸し暑い真夏の夜にこの大隅が師匠の家で木下蔭挟合戦このしたかげはざまがっせんの「壬生みぶ村」を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と、小川先生はひとりごとのように言って、その鈍重どんじゅうな眼をぎろりと光らせたが
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
と、鈍重どんじゅうな声が走った。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鈍重どんじゅうにさえ見える。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)