野獣やじゅう)” の例文
旧字:野獸
たとえば野獣やじゅう盗賊とうぞくもない国で、安心して野天のてんや明けはなしの家でると、風邪かぜを引いてはらをこわすかもしれない。○をさえると△があばれだす。
蛆の効用 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そのとき、野獣やじゅうがのどのかわきをうるおして、河から帰ってきましたが、娘を見るとびっくりして、そばをとびすぎていきました。むりもありません。
やや下ぶくれでくちびるが小さくいて出たような天女型の美貌びぼうだが、額にかざした腕の陰影いんえいが顔の上半をかげらせ大きな尻下しりさがりのが少し野獣やじゅうじみて光った。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
後に希臘ギリシャ人がスキュテイア人と呼んだ未開の人種の中でも、この種族は特に一風いっぷう変っている。彼等かれらは湖上に家を建てて住む。野獣やじゅう襲撃しゅうげきけるためである。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
首領かしら四馬剣尺は、大きな腹をゆすってわらった。机博士は、まるでおいつめられた野獣やじゅうのような顔をして、三重ヴェールを見つめていたがやがてキーキー声をふりしぼって叫んだ。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
呂宋兵衛るそんべえ以下、野獣やじゅうのごとき残党輩ざんとうばら竹童ちくどうのあげた狼煙のろしも、伊那丸軍いなまるぐんの出動も知らず、みなゆだんしきッた酒宴さかもり歓楽最中かんらくさいちゅう。なかにはすでにいつぶれて、正体しょうたいのない野武士のぶしさえある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あの声をきけよ、ぼくらのテントをねらって、野獣やじゅうがやってくるようだ」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
二つ三つあわれな荷車のほかに、目にはいったものは大きなおりだけで、そのそばへると野獣やじゅうのほえ声がした。ドリスコル一家の財産ざいさんであるあのごてごてと美しくぬりたてた馬車はなかった。
でもアルレッキーノと結婚けっこんしたいと思っていました。もしもこの『美女と野獣やじゅう』とが結婚したとすれば、じっさい、あまりにもこっけいなことになったでしょう。