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道庵
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だうあん
甚兵衞聞出しければ彼が
留守へ忍び入て物せんと茲に
惡心を生じ
旦暮道庵が
宅の樣子を
窺ひ
或夜戌刻頃來りて見れば表は
錠前を
「私は——牛込
御納戸町の一
色道庵の伜
綾之助と申します」
尋ね有しかば
道庵別に心當りは御座なくと申に然らば日頃出入致す
貧乏人又は心
易く致し
朝夕小遣錢などを
考へ又元の水口より立出
何喰ぬ
顏にて我が家を
指て立歸りたり
道庵は此日
病家にて
手間取
漸々夜亥刻近き頃歸り來り
灯を
點して
四邊を見るに座敷を取
散しあれば
不審に思ひ其
邊を