“逆(さ)” の例文
「ハハハハもうたいてい逆(さ)かになっていい時分だと思ったら、やはりたしかなところがあるね。それじゃ仕方がないあきらめるかな」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
闇太郎は事もなげに、例の顎を逆(さ)か撫(な)でに、撫で上げながら
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「あれだ」と宗近君が指(ゆびさ)す後(うし)ろを見ると、白い泡(あわ)が一町ばかり、逆(さ)か落しに噛(か)み合って、谷を洩(も)る微(かす)かな日影を万顆(ばんか)の珠(たま)と我勝(われがち)に奪い合っている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
八の字の尾に逆(さ)か立(だ)ちを命じたような髯を見るや否や御多角(おたかく)はいきなり台所へ引き戻して、ハハハハと御釜(おかま)の蓋(ふた)へ身をもたして笑った。主人は平気なものである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
方寸を逆(さ)かさまにして見ると寸方となるところに愛嬌(あいきょう)がある。天(あま)の橋立(はしだて)を股倉(またぐら)から覗(のぞ)いて見るとまた格別な趣(おもむき)が出る。セクスピヤも千古万古セクスピヤではつまらない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ちょっと見てすぐ惚(ほ)れるような男女を捕えて軽薄と云う、小説だと云う、そんな馬鹿があるものかと云う。馬鹿でも何でも事実は曲げる訳には行かぬ、逆(さ)かさにする訳にもならん。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)