退屈凌たいくつしの)” の例文
子供のない奥さんは、そういう世話を焼くのがかえって退屈凌たいくつしのぎになって、結句けっく身体からだの薬だぐらいの事をいっていた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かけてみたが、出ているというので、退屈凌たいくつしのぎにここへ昼寝する積りで来てたんだが……
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
アヽ当家たうけでも此頃このごろかういふ営業えいげふを始めたのぢや、殿様とのさま退屈凌たいくつしのぎ——といふばかりでもなくあそんでもられぬからなにがな商法しやうはふを、とふのでおはじめになつたから、うかまア諸方しよはう吹聴ふいちやうしてんなよ。
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
するととうなかから、なんともいようのない、うつくしいうたこえてたので、王子おうじはじっと立停たちどまって、いていました。それはラプンツェルが、退屈凌たいくつしのぎに、かわいらしいこえうたっているのでした。
退屈凌たいくつしのぎに好い相手のできた気になった津田のしたには締りがなかった。彼は面白半分いろいろな事をいた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
医者の許可を得たのだから、普通の人の退屈凌たいくつしのぎぐらいなところと見たらよかろうと余は弁解した。医者の許可もさる事だが、友人の許可を得なければいかんと云うのが三山君の挨拶あいさつであった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
奥さん、時間があるなら、退屈凌たいくつしのぎに幾らでも先刻さっきの続きを話しますよ。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)