軽躁けいそう)” の例文
旧字:輕躁
これ他なし我邦わがくに固有の旧文化破壊せられて新文化の基礎遂に成らず一代の人心甚だ軽躁けいそうとなりかつ驕傲きょうごう無頼ぶらいに走りしがためのみ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
謙信、若年じゃくねんなるがために、このたびのわが行動を、無謀とも案じるのであろうが、怪しむをやめよ、謙信は決して、軽躁けいそう、功をあせっているのではない。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今の少年は不遜ふそんなり軽躁けいそうなり、みだりに政治を談じて身の程を知らざる者なりとて、これをとがむる者あれども、かりにその所言にしたがいてこれを酔狂人とするも
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
軽躁けいそうと心附かねばこそ、身を軽躁に持崩しながら、それをしとも思わぬ様子※醜穢しゅうかいと認めねばこそ、身を不潔な境にきながら、それを何とも思わぬ顔色かおつき
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
教育の精神は単に学問を授けるばかりではない、高尚こうしょうな、正直な、武士的な元気を鼓吹こすいすると同時に、野卑やひな、軽躁けいそうな、暴慢ぼうまんな悪風を掃蕩そうとうするにあると思います。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
君たちフランス人は、きわめて軽躁けいそうで、スペインやロシアなどの縁遠い不正にたいして、問題の底をよく知りもしないでまっ先に騒ぎたてる。僕はそのために君たちが好きなのだ。
となだむる善平にりを返して、綱雄はあくまできっとしていたりしが、いや私はあんな男と交わろうとは決して思いません。見るから浮薄らしい風の、軽躁けいそうな、徹頭徹尾虫の好かぬ男だ。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
軽躁けいそうなものがどうしてかくまで誠実になれるのであろう。私はそれが不思議でもあり、また尊くてならない。纒綿として濃やかな、まことにみちたる感情が私の胸のなかをあふれ流れている。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
曹操がそれをあわれんで自身の一女を娶合めあわせたので、諸人の尊重をうけてきたが、ようやくその為人ひととなりが現われてくるにつれて天性やや軽躁けいそう、そして慳吝けちたちも見えてきたので
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しお勢を深くとがき者なら、くらべて云えば、稍々やや学問あり智識ありながら、尚お軽躁けいそうを免がれぬ、たとえば、文三の如き者は(はれやれ、文三の如き者は?)何としたもので有ろう?
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
何ぞ知らん——人々が楽観して軽躁けいそうに勝利を夢みるとき、孔明の心中には、さんたる覚悟が誓われていたのである。彼は決して、成功を期していない、誰よりも魏の強大を知っている。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)