軽羅うすもの)” の例文
旧字:輕羅
其の古い楓が緑を投げる街路樹の下を、私共は透き通る軽羅うすものに包まれて、小鳥のように囀りながら歩み去る女を見る事が出来ます。
C先生への手紙 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「さあ、わしには解らない」こう云ったのは六十五六歳、葉洩れの月光に映じた姿、脚絆きゃはん甲掛こうかけ、旅装い、軽羅うすものの十徳を纒っている。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それは柏の所謂「愛の杯」から其儘抜出してきたような彼女が白衣の軽羅うすものを纏って、日ざしの明るい森を背にして睡蓮の咲く池畔に立っている妖艶ようえんな姿であった。
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
……その間に軽羅うすものを纏うた数十名の美人が立ちこもって、愉快な音楽に合わせて一斉に舞踏を初める……。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
真夏の夕暮、室々のへだてのふすまは取りはらわれて、それぞれのところに御簾みす几帳きちょうめいた軽羅うすものらしてあるばかりで、日常つね居間いままで、広々と押開かれてあった。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
桃色と幻青あおとの軽羅うすものの女を、好んで描く女画家マリー・ローランサンにほれてゐることだ。
軽羅うすもの女体によたいに祭る。
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あっさりと水色の手柄——そうした感じの、細っそりとした女は細君の屋寿子やすこで、そのうしろは、切髪の、黄昏たそがれの色にまがう軽羅うすものを着てたたずんだ、白粉気おしろいけのない寂しげな女。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
妖艶な臙脂べに色の夜会服を纏ったスペイン人らしい若い女や、朱鷺とき色の軽羅うすものをしなやかに肩にかけている娘、その他黄紅紫白とりどりに目の覚めるような鮮な夜会服を着た美しい女達が
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)