赭顔しゃがん)” の例文
旧字:赭顏
ギラリと輝く明眸、茶筌ちゃせんい上げた逞しい赭顔しゃがんが現われる。左ので、黒漆こくしつの髯を軽く抑えて、ズイと一足前へ出た——
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正面の大きな机の向うに、いろいろな平面図や断面図を背にしてすわっているのは、伍長でもあろうか大将でもあろうか、赭顔しゃがん白髪の堂々たる風貌の軍人。
住職は白頭赭顔しゃがん体躯たいく肥大の人で年頃は五十あまり、客に応接することはなはだ軽快にしてまたすこぶる懇切である。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
剃刀かみそりを想わせるほそ長い赭顔しゃがんに、眼の配りが尋常でないのは、さこそと思わせるものがあった。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
猫背で、長いオーバーを引摺ひきずるように着、赭顔しゃがんに大きな黒眼鏡をかけた肥満漢であった。
仏頂寺弥助は、勇仙からつきつけられた色縮緬の胴巻に、赭顔しゃがんを火のようにえらせて
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
すべては、野のなかで行われる饗宴きょうえんを飾るためであった。そして、彼らを率いて先頭に立つのが、白髪赭顔しゃがんの隊長である相田清祐であった。陣羽織も野袴のばかまも折目ただしく端然としていた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
白髯はくぜん赭顔しゃがんのデビス長老が、質素な黒のガウンを着て、祭壇さいだんに立ったのです。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
白髪赭顔しゃがんの上野介の眼がギロリと光る。
本所松坂町 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
順昭が、思わず眼をみはると、籠手こての傷口を縛りながら、繩付のうしろに付いて控えていた朝山氏堯あさやまうじたかという赭顔しゃがんの勇将が、頭を下げて答え直した。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの白髪赭顔しゃがんのおごそかな姿が、鉄扇をしゃに構えて、そこにすわっていられたものだが。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
白髪赭顔しゃがんのワーナー博士は、愛用のパイプから紫煙をゆるやかにくゆらせていた。博士は、ちょっと首を左右にふり向けて室内を見渡した。この部屋にいる者の顔色を打診したのであろう。
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
中には赭顔しゃがん白髪の老船頭もいて、これらは“風見”“水見”といって、内海の水路や天気ぐせなどはをさすようにそらんじている海の古老たちだった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白髪赭顔しゃがんの、飛行島建設団長リット少将と、もう一人、涼しそうなヘルメット帽をかぶって白麻の背広のふとった紳士とが、同じように双眼鏡を眼にあててはるか北の方の水平線を眺めている。
浮かぶ飛行島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
やがて、閣老の一名であろう、赭顔しゃがん白髪の見るからに凡庸でない老武士が
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
といったのは、もう一ツの笠、赭顔しゃがん総髪の武家ていです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)