貧富ひんぷ)” の例文
貴賤きせん貧富ひんぷの外にあるむなしさ、渋さと甘さと濃さと淡さとを一つの茶碗に盛り入れて、あわしるも一緒に溶け合ったような高い茶の香気をかいで見た時は
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
有名なパサデナの邸宅街ていたくがいを通り、御殿ごてんのような建物に、貧富ひんぷ懸隔けんかくにつき、考えさせられることも多かった。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
ゆえに国民が植物に関心を持つと持たぬとによって、国の貧富ひんぷ、したがって人間の貧富が分かれるわけだ。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
ヘイ水揚ものも御座りましたが夫も大略あらかた結了かたづいて少のひまを得ましたより參りしわけも外ならず時も彌生やよひの好時節上野隅田すみだの花も咲出さきいで何處も彼所もにぎはふゆゑ貧富ひんぷを問ず己が隨意まゝ割籠わりごを造り酒器さゝへ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
権利をことにし、骨肉の縁を異にし、貧富ひんぷを異にし、教育を異にし、理財りざい活計かっけいおもむきを異にし、風俗ふうぞく習慣しゅうかんを異にする者なれば、おのずからまたその栄誉の所在しょざいも異なり、利害の所関しょかんも異ならざるを得ず。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)