貝細工かいざいく)” の例文
その家の前のくりの木の下に一人のはだしの子供こどもがまっ白な貝細工かいざいくのような百合ゆりの十の花のついたくきをもってこっちを見ていました。
四又の百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「そうか、ふたも底もねえような殺しで、大方下手人の見当もついたようだ。貝細工かいざいくよりは、気のきいた土産になるかも知れないよ。見るが宜い」
呑気のんきなことを言っている。お絃は、おかんを引き上げた指先を、熱かったのだろう、あわてて耳へ持って行って、貝細工かいざいくのような耳朶みみたぶをつまみながら
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
いつか、青年せいねんが、行商ぎょうしょうにきた時分じぶんってきたような、あお貝細工かいざいくや、ぎんのかんざしや、口紅くちべにや、香油こうゆや、そのほかおんなたちのきそうなあか絹地きぬじや、淡紅色うすべにいろぬのなどであったのです。
北の不思議な話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そしてガドルフは自分のほてっていたむ頭のおくの、青黝あおぐろ斜面しゃめんの上に、すこしもうごかずかがやいて立つ、もう一むれの貝細工かいざいくの百合を、もっとはっきり見ておりました。
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
さながらおせんがってきた、貝細工かいざいくのように、ぎんのかんざしのように、あかきぬひろげたように、淡紅色うすべにいろ布地ぬのじるように、それらのものをみんな大空おおぞらかっていたように……。
北の不思議な話 (新字新仮名) / 小川未明(著)