讒誣ざんぶ)” の例文
なぜと云ふに、逆意の有無を徳川氏に糺問きうもんせられる段になると、其讒誣ざんぶあへてした利章と對決するより外に、雪冤せつゑんの途はないのである。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
今口を極めて李陵を讒誣ざんぶしているのは、数か月前李陵が都を辞するときにさかずきをあげて、その行をさかんにした連中ではなかったか。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
しかるに世間には往々、この愛すべき自然児たる雲ちゃんをつかまえて、道中筋の悪漢の代表でもあるかの如く讒誣ざんぶする心得違いが無いではない。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いずれ頼母たのもがあの夜の中に、田安中納言様へ自分のことを、お八重やえを奪って逃げた不所存者、お館を騒がした狼藉者として、讒誣ざんぶ中傷したことであろう。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
死際しにぎわに汝らは兄弟なり必ず讒誣ざんぶに迷わされて不和を生ずるなと遺誡したが、前話同様野干の讒言を信用してどちらも反省せず相闘うてふたつながら死んだとある
いつか、意地の悪い讒誣ざんぶが広まって、大主教の耳にさえはいったことがある(この修道院だけでなく、長老制度の採用されている他の修道院に関してであった)
その実玄竜はていよく愛国主義の美名のもとに隠れて、朝鮮語での述作はおろか言語そのものの存在さえも政治的な無言の反逆だと讒誣ざんぶをして廻る者の一人なのだ。
天馬 (新字新仮名) / 金史良(著)
資本家の新聞雑誌の陋劣ろうれつ讒誣ざんぶ虚報や、警察官等の法外な迫害は左程彼女を傷めはしなかつた。しかし、自分達の仲間からの攻撃は彼女にとつて堪えがたいものであつた。
乞食の名誉 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
彼の才能をねたむ人たちの讒誣ざんぶであった、学問をし儒学にはいれば老壮をたたくのは自然である、朱子以外に眼をつむることは、単に御用学者としても怠慢といわなければなるまい
初蕾 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それは嘘付の喜田が話したことであるが、喜恵子が処女ではなくして既に今日まで童貞を破つて居る女であつて、甞ては或男と私通して横浜まで逃げて行つたと云ふ讒誣ざんぶを受けて居ることであつた。
その不和の原因もやはり師直の讒誣ざんぶ中傷に因ると伝えられていた。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しかもなお讒誣ざんぶは絶えなかった。
渡良瀬川 (新字新仮名) / 大鹿卓(著)
第四に三人は兄弟同樣に心得る事、第五に三人の中で讒誣ざんぶに逢ふものがあつたときは、三人同意して忠之に告げる事、以上五箇條である。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
日比ひごろ伯林ベルリンの留學生の中にて、或る勢力ある一群と余との間に、面白からぬ關係ありて、彼人々は余を猜疑し、又遂に余を讒誣ざんぶするに至りぬ。
舞姫 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
なほ我地位をくつがへすに足らざりけんを、日比ひごろ伯林ベルリンの留学生のうちにて、或る勢力ある一群ひとむれと余との間に、面白からぬ関係ありて、彼人々は余を猜疑さいぎし、又つひに余を讒誣ざんぶするに至りぬ。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
加藤家の事件は光正が父を讒誣ざんぶしたものとは知れたが、父忠廣には徳川家へ屆けずに生れた二歳の庶子某を領國へ連れて歸つたかどがあるので、六月朔日ついたちに改易を仰せ附けられて落著した。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
なおわが地位をくつがえすに足らざりけんを、日ごろ伯林ベルリンの留学生のうちにて、ある勢力ある一群ひとむれと余との間に、おもしろからぬ関係ありて、かの人々は余を猜疑さいぎし、またついに余を讒誣ざんぶするに至りぬ。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)