護謨風船ごむふうせん)” の例文
夫婦づれで編笠あみがさをかぶって脚絆きゃはんをつけて歩いて行くホウカイぶし、七色の護謨風船ごむふうせんを飛ばして売って歩くおやじ、時には美しく着飾った近所の豪家の娘なども通った。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
このみせまがかどかげになつたところで、くろ山高帽やまたかばうかぶつた三十ぐらゐをとこ地面ぢめんうへ氣樂きらくさうに胡坐あぐらをかいて、えゝ御子供衆おこどもしゆう御慰おなぐさみとひながら、おほきな護謨風船ごむふうせんふくらましてゐる。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そう云う時は、ただでさえ小さな先生の体が、まるで空気の抜けた護謨風船ごむふうせんのように、意気地いくじなくちぢみ上って、椅子いすから垂れている両足さえ、ぶらりと宙に浮びそうな心もちがした。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)