視野しや)” の例文
画面がめんが変ると、こんどは広い屋敷やしきの庭先きがうつり、スプリングコートを着て帽子をかぶった男の姿が、私の視野しやをかすめたと見るまに
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
五郎の視野しやの中で、もう丹尾の姿は豆粒ほどになっている。突然それが立ちどまる。火口をのぞいているらしい。また歩き出す。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
仰臥すると視野しやはもう空の一色であった。晴れた日、曇った日、雲の流れ漂う日、暁の光り、夕ぐれのうつろい、四時私の視野をはなれなかった。
(新字新仮名) / 鷹野つぎ(著)
やく〇、〇〇〇〇〇五ミリ くらいまでのものならばぼんやり光る点になって視野しやにあらわれその存在そんざいだけをしめします。これを超絶顕微鏡ちょうぜつけんびきょういます。
手紙 三 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
右の方は、深紅しんく窓掛カアテンひだが私の視野しやを遮り、左の方は、透明な窓硝子が私を庇護かばつて呉れたが、荒凉くわうりやうたる十一月の日から私を引き離しては呉れなかつた。
森をぬけると視野しやはかつぜんと開けて、砂浜の先に、たけりくるった黒い海が、白いきばをむきたてて、なぎさをかんでいる。黒闇々こくあんあんのなかに白く光る波がものすごい。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
ようやく視野しやに、その疑問の人物がはいって来た。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
千倍ぐらいになりますと、下のレンズの直径ちょっけい非常ひじょうに小さくなり、したがって視野しやに光があまりはいらなくなりますので、下のレンズをあぶらひたしてなるべく多くの光を入れてものが見えるようにします。
手紙 三 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
彼がドアに立つて、遠くの方を眺めてゐるときなど、ふと彼女が視野しやに現はれると、彼の頬は輝き、その大理石のやうな顏は、ゆるまず、知らずに變つていつたが、その靜けさのうちに、動く筋肉か
眼に当てて、ゆるゆる視野しやを移動した。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)