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みめぐ
贋探偵の銀平が
出去りたる後、得右衛門はなお不審晴れ遣らねば、
室の内を
見廻るに、畳に附たる血の
痕あり。一箇処のみか二三箇処。
廻り夫より所々を
見物しける内一
疋の
鹿を
追駈しが鹿の
迯るに寶澤は
何地迄もと思あとを
慕しも
終に鹿は見失ひ
四方を
見廻らせば
遠近の山の
櫻今を
九助は次第に心地元に復し、始めて幻夢の
覚めたる如く、首を挙げて四辺を
見廻らすに、時は既に
申の下りとおぼしく、太陽
巒際に臨み
返照長く横たはれり。
小皿伏せたるやうなる
縁狭き笠に
草花插したるもをかしと、
携へし目がね
忙はしくかなたこなたを
見廻らすほどに、向ひの岡なる一群きは
立てゆかしう覚えぬ。