要心ようじん)” の例文
かれは常に心のうちで、そういう工合ぐあいに修養しようと要心ようじんしながら、ツイ自分から口をだしては、自分から用を求めてしまった。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さてその人と私らはわかれましたけれども、今度こんどはもう要心ようじんして、あの十けんばかりのわんの中でしか泳ぎませんでした。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「そんなことはない。まだ、みずが、こんなにつめたい。そして、どこにもはるらしい気分きぶんはこない。こんなわったことのあるときは、要心ようじん必要ひつようなのだ。」
都会はぜいたくだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
その三方の壁に、黒い鉄格子と、鉄網かなあみで二重に張り詰めた、大きな縦長い磨硝子すりガラスの窓が一つずつ、都合三つ取付けられている、トテも要心ようじん堅固に構えた部屋の感じである。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ギンはそれからは毎日気をつけて、そんなことにならないように、要心ようじんしていました。
湖水の女 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「なに大丈夫、これでいつものように要心ようじんさえしていれば」
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いよいよ要心ようじんに要心をくわえながら、下段げだん戒刀かいとうをきわめてしぜんに、頭のうえへ持っていった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
癇癪かんしゃくを起して飛び込まないように要心ようじんをしてか」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
九鬼弥助は、したり顔をして、要心ようじん深く床下の土にヘバリつきながら、片手に抜刀ぬきみをつかんだまま、もういっそう、奥の方へ、ジリジリと身を退いて、その様子を見届けていた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)