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袢天
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はんてん
ふりがな文庫
“
袢天
(
はんてん
)” の例文
その茶店の前の往来へ、例の
袢天
(
はんてん
)
とどてらの
合
(
あい
)
の
子
(
こ
)
が出て、
脂
(
やに
)
だらけの歯をあらわに
曝
(
さら
)
しながらしきりに自分を呼んでいる。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
袢天
(
はんてん
)
の袖に、カガシのように手を通しながら、漁夫が段々を上ってきて、ハッチから首を出した。首を出したまま、はじかれたように叫んだ。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
煽
(
あお
)
るように車台が動いたり、土工の
袢天
(
はんてん
)
の
裾
(
すそ
)
がひらついたり、細い線路がしなったり——良平はそんなけしきを
眺
(
なが
)
めながら、土工になりたいと思う事がある。
トロッコ
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
姉は
其頃
(
そのころ
)
何んでも二十二三であった。まだ
児供
(
こども
)
がなく自分を大へんに可愛がってくれたのだ。自分が姉を見上げた時に姉は白地の手拭を姉さん
冠
(
かぶ
)
りにして筒袖の
袢天
(
はんてん
)
を着ていた。
守の家
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
袢天
(
はんてん
)
も帽子もドロドロにし
炭坑長屋物語
(新字新仮名)
/
猪狩満直
(著)
▼ もっと見る
皆はものも云えず、そのままゾロゾロタラップを下りて行った。「分った、分った」口の中でブツブツ云いながら、塩ぬれのドッたりした
袢天
(
はんてん
)
を脱いだ。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
床几
(
しょうぎ
)
が二尺ばかり往来へ
食
(
は
)
み出した上から、二三足
草鞋
(
わらじ
)
がぶら下がって、
袢天
(
はんてん
)
だか、どてらだか分らない着物を着た男が背中をこちらへ向けて腰を掛けている。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
薄暗い
隅
(
すみ
)
の方で、
袢天
(
はんてん
)
を着、
股引
(
ももひき
)
をはいた、風呂敷を三角にかぶった女
出面
(
でめん
)
らしい母親が、
林檎
(
りんご
)
の皮をむいて、棚に腹ん
這
(
ば
)
いになっている子供に食わしてやっていた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
或る晩もその用で内幸町まで行って留守を
食
(
く
)
ったのでやむを得ずまた電車で引き返すと、偶然向う側に
黄八丈
(
きはちじょう
)
の
袢天
(
はんてん
)
で赤ん坊を
負
(
おぶ
)
った婦人が乗り合せているのに気がついた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
真中に
印袢天
(
しるしばんてん
)
を着た男が、立つとも坐るとも片づかずに、のらくらしている。今までも泥の中へ何度も倒れたと見えて、たださえ色の変った
袢天
(
はんてん
)
がびたびたに
濡
(
ぬ
)
れて寒く光っている。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
馬は泡を吹いた口を
咽喉
(
のど
)
に
摺
(
す
)
りつけて、
尖
(
とが
)
った耳を前に立てたが、いきなり前足を
揃
(
そろ
)
えてもろに飛び出した。その時栗毛の胴が、
袢天
(
はんてん
)
を着た男の
提灯
(
ちょうちん
)
を
掠
(
かす
)
めて、
天鵞絨
(
びろうど
)
のごとく光った。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それから二人でベンチへ隣り合せに腰を掛けていると、だんだん
停車場
(
ステーション
)
へ人が寄ってくる。大抵は
田舎者
(
いなかもの
)
である。中には長蔵さんのような
袢天
(
はんてん
)
兼
(
けん
)
どてらを着た上に、
天秤棒
(
てんびんぼう
)
さえ
荷
(
かつ
)
いだのがある。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
袢
漢検1級
部首:⾐
10画
天
常用漢字
小1
部首:⼤
4画
“袢天”で始まる語句
袢天著