衝動ショック)” の例文
その時、ドアの外へ、何かぶつかって来たような大きな音がした。産衣うぶぎにつつまれている赤い小さい顔は衝動ショックをうけて突然泣きだした。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふと無意識に出て来た言葉から衝動ショックを受けて、眼前の沢子に対する情熱が高まってくるのを感じた。胸の中に苦しい震えが起った。
野ざらし (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
さう思つた瞬間に、瑠璃子は鉄槌で叩かれたやうに、激しい衝動ショックを受けた。気味の悪い悪寒が、全身を水のやうに流れた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
が、この衝動ショックから恢復した時、俊助の心は何よりも、その手巾ハンケチの閃きに応ずべき相手を物色するのに忙しかった。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その不思議な感情の衝動ショックは、ポオルとサイラスの牢獄のいしずゑを搖り動かした地震のやうにやつて來たのである。
彼がみずから見たと思った物がどんなものであるとしても、彼のからだは非常な衝動ショックを受けたようである。
あの時ジナイーダの外見みかけはすこぶる冷静だったけれども、内心ではそれが異常な衝動ショックだったのだ。
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
閣下は又しても、ふふん、救い難き関係妄想じゃ、とお嘲笑いに成るかも知れません。従ってここで、如何に私の衝動ショックが烈しいものであったかを説明申したとて無駄で有りましょう。
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
この再度のいさかいは、最初のものよりもさらに強い衝動ショックをわたしに与えました。
「しかし、あの人の実在するということが、わたしにとっては衝動ショックでもあり、恐怖テロルでもあるのです。あなたがもし私の場合であったらばどう感じられますか。まあ、想像してごらんなさい」
その実験の結果としてあらわれました強烈な精神的の衝動ショックのために御自身の意識を全く喪失しておられましたのを、現在、只今、あざやかに回復なされようとしておいでになるので御座います。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あの時どうして君が……あんなに衝動ショックを感じたのか……実はね、君はあの時、熱に浮かされながら、しきりになんだか指輪のことだの、鎖のことばかりうわ言に言ってたんだよ!……うん、そうだ
その死に対してやはり一種の衝動ショックを感ぜずにはいられなかった。
深見夫人の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
きわどい衝動ショックを感じないではいられない。
全身に一種の衝動ショックを感じた。
そしてその時は一層強い衝動ショックを受けた。或る何ともいえない石の壁にぶつかったような気がした。彼は苛ら苛らして来た。
蘇生 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そう思った瞬間に、瑠璃子は鉄槌てっついたたかれたように、激しい衝動ショックを受けた。気味の悪い悪寒おかんが、全身を水のように流れた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
少し経てば、私はこの事件によって受けた衝動ショックに打ちつことが出来よう。この航海日誌をつけ始めたとき、私はそれを終わりまで書かなければならないとは考えていなかった。
また、衝動ショック的な死に方をした場合には、全身の汗腺が急激に収縮する。そして、その部分の皮膚に閃光的な焔を当てると、そこには、解剖刀メスで切ったような創痕きずあとが残されるのだ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
右近の一言によって、彼は今まで自分が立っておった人間として最高の脚台から、引きずり下ろされて地上へ投げ出されたような、名状し難い衝動ショックを受けた。
忠直卿行状記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
荘田勝平と云ふ名前が、目に入つたとき、その書式を持つてゐる瑠璃子の手は、その儘しびれてしまふやうな、厭な重くるしい衝動ショックを受けずにはゐられなかつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
荘田勝平と云う名前が、目に入ったとき、その書式を持っている瑠璃子の手は、そのまましびれてしまうような、いやな重くるしい衝動ショックを受けずにはいられなかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
激しい衝動ショックを感じて、わらをもつかみたい今の気持には、美和子に勇気づけられたことで、やっと心を落着け、メズーサの首のようにも恐ろしく思える夫人に直面すべく、階段に足をかけた。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)