蛭子えびす)” の例文
蛭子えびす神社の大鳥居の前で、瞑目めいもくして、勿体もったいらしく、柏手かしわでをポンポン打っていた胡蝶屋豆八は、うしろから、軽く背中をたたかれた。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「それじゃアあねごの思惑通り、こっちへさらわれて来たんだな」腕に蛭子えびすの刺青のある小頭の蛭子三郎次である。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
奈良田のそれに比して色劣れど、筆らまほしく思わるるところも少からずあった。池の茶屋より二里あまりにして、四時頃平林の蛭子えびす屋という宿に着いた。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
と、今度は蛭子えびす様——これは前に大黒の稽古が積んで経験があるから、いくらか形もつく。大黒が十のものなら五つで旨く行って、まずそれでお清書せいしょは上がるのです。
そんなことが三日続いて、三日めは殊に大漁であったので、その石を蛭子えびす大明神として祀りました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
外でもない、その男は栗のやうに色の黒い、そして蛭子えびす様のやうに耳の遠い関雪氏であつた。
日夜いた一枚の命懸けの仕事する者どもゆえ、朝夕身の安全を蛭子えびす命に祷り、漁に打ち立つ時獲物あるごとに必ずこれに拝詣し報賽ほうさいし、海に人落ち込みし時は必ずその人の罪を祓除ふつじょ
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
そのほか讃岐さぬき金比羅こんぴら、大和の大峰など種々の霊怪を唱え、また稲荷いなり、不動、地蔵をまつり、吉凶を問い病を祈り、よって医者の方角をさし示し、あるいは医薬をとどめ死に至らしめ、蛭子えびす
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
そんなら蛭子えびす何所どこだい。甲「馬越恭平君ばごしきやうへいくんさ。乙「へー理由わけです。 ...
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
先刻さっき、みなさんにお逢いするちょっと前、お蛭子えびすさんの鳥居のところで、栗田銀五親分から、大層、おどかされましたのよ」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
平尾氏から大黒だいこく蛭子えびすの面を彫ってくれと頼まれて、こしらえてあげたことなどがあり、それ以来、近しいともなく近しく思って私のことを心配してくれられていたものと見えます。
蛭子えびす三郎次、布袋ほていの市若、福禄の六兵衛、毘沙門の紋太、寿老人の星右衛門、大黒の次郎、弁天の松代、これが彼らの名であって、弁天の松代が一党のかしらで、そうして松代は美しい
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
蛭子えびす神社の境内で、あれだけいっておいたのに、あんたは裏切ったのね。おまけに、血迷って、玉井さんのおかみさんに、偽手紙を書くなんて。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「おっとよい来た」と答えたのは、小頭の蛭子えびす三郎次である。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)