葡萄蔓ぶどうづる)” の例文
しわだらけの私の寝室をノックする音がして、暗闇から出た女の手が、楕円形の天井をみつめていた私の目前で葡萄蔓ぶどうづるのようにからんで
大阪万華鏡 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
侯爵は枯蔦かれつたをひいてひさしの雪を落した。家のなかに寝てゐた薄闇が匂ひもののやうに大気へ潤染にじんで散る。腰めの葡萄蔓ぶどうづるの金唐草に朝の光がまぶしく射す。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
そしてそれらの節奏リズムのまにまに、たな葡萄蔓ぶどうづるがよじ上るように、種々の音楽が高まってくる、銀音の鍵盤から出る白銀の琶音アルペジオ、悩ましいヴァイオリンの響き
がま稈心みごしな葡萄蔓ぶどうづる、麻糸、木綿糸、馬の毛など様々なものが使われます。新庄しんじょうの市日などにざいからこれを着て出てくる風俗は、都の者には眼を見張らせます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
にんじんは、そこで、ある時はおじさんが鶴嘴を使うのを眺め、一歩一歩その後をつけ、ある時は、葡萄蔓ぶどうづるたばの上で寝ころび、空を見上げて柳の芽を吸うのである。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
と仰りながら僕を長椅子ながいすすわらせて、その時また勉強の鐘がなったので、机の上の書物を取り上げて、僕の方を見ていられましたが、二階の窓まで高くあがった葡萄蔓ぶどうづるから
一房の葡萄 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
昔は葡萄蔓ぶどうづるの冠をかぶり太陽の光を浴び、神々しい半身裸体のうちに大理石で造られたような乳房を示していた酒神バッカス祭も、今日では北部の湿ったぼろの下に形がくずれてきて
修道院めいた高い壁に囲まれてる狭い方形の庭だった。芝生や平凡な花の植わってるます形の間に砂の小径がついていた。葡萄蔓ぶどうづる薔薇ばらが巻き込まれてる青葉棚が一つあった。
その門はいつも人の心を誘うように半ば開かれていて、さほど陰気でない二つのものがそこから見えていた、すなわち、葡萄蔓ぶどうづるのからみついた壁に取り巻かれてる中庭と、ぶらついてる門番の顔とが。
アーダはクリストフの手を取り、家の横を、庭の暗闇くらやみの方へ引張っていった。茂るに任せた葡萄蔓ぶどうづるが一面にたれさがってるバルコニーの下に、二人は身を潜めた。あたりは重い闇だった。