うすづ)” の例文
目路めじのたかさにうすづいた陽は、木蔭や藪の底にひそんでいた冷い空気を呼び寄せた。馬は汗を流しているが、心のなかは寒いのである。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
安心しておいでなさいとばかりピューッと圓朝は飛びだしていった、大晦日の夕日うすづく茅町の通りのほうへ。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
暮れやすい日が西にうすづきはじめたので二人は淋しく立上った。居士の歩調は前よりも一層怪し気であった。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
それからにちおなじことをしてはたらいて、黄昏たそがれかゝるとうすづき、やなぎちからなくれてみづくらうなるとしほ退く、ふねしづむで、いたなゝめになるのをわたつていへかへるので。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
分たず人に代つてうすづくとあるも此等のおもかげかしばしと立寄りたれど車なれば用捨ようしやなく駈けくだる下れば即ち筑摩川ちくまがはにて水淺けれど勇ましく清く流れて川巾は隅田川ほどあり船橋掛るなかば渡りて四方を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
それから日一日ひいちにちおなじことをして働いて、黄昏たそがれかかると日がうすづき、柳の葉が力なくれて水がくろうなるとしお退く、船が沈んで、板が斜めになるのを渡って家に帰るので。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
馬喰町ばくろちょう辺りの旅籠さして戻り行く後ろ姿にうすづいている暮春の夕日の光を見てとれる人
随筆 寄席風俗 (新字新仮名) / 正岡容(著)