臆断おくだん)” の例文
旧字:臆斷
いずれも芭蕉自身がなんらかの意味において指揮棒をふるうてできたものと仮定してもおそらくはなはだしい臆断おくだんではないであろうと思う。
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
しかし、活動にもいろいろあるがいかなる意味の活動か一と口に云えるかと聞かれると、少し臆断おくだん過ぎるようですが、私はこう答えても差支さしつかえないと考えます。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
我々が物の真相を知るというのは、自己の妄想もうそう臆断おくだん即ちいわゆる主観的の者を消磨し尽して物の真相に一致した時、即ち純客観に一致した時始めてこれをくするのである。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
ただ自分がそうであるからとて、人もそうであると臆断おくだんするのがよくないと思う。
去年 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
夫子ふうしあながちにしかき道義的誤謬ごびうの見解を下したるは、大早計にも婦人を以て直ちに内政に参し家計を調ずる細君と臆断おくだんしたるに因るなり。婦人と細君と同じからむや、けだし其あひだに大差あらむ。
醜婦を呵す (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おのれ臆断おくだんを以て理についいにしへの氷室をかいするなり。
自分はできるだけ根拠なき臆断おくだんと推理を無視する空想を避けたつもりである。しかし行文の間に少しでも臆断のにおいがあればそれは不文の結果である。
金で細工さいくをした妙な形の台である。これを蝋燭立と見たのは三四郎の臆断おくだんで、じつはなんだかわからない。この不可思議の蝋燭立のうしろに明らかな鏡がある。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おのれ臆断おくだんを以て理についいにしへの氷室をかいするなり。
これからもまたこのイズムに支配せられざるべからずと臆断おくだんして、一短期の過程より得たる輪廓を胸に蔵して、すべてを断ぜんとするものは、ますを抱いて高さを計り
イズムの功過 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「試み」なしの臆断おくだんを続けたり、「試み」の結果を判断する合理的の標準なしに任意の結論を試みたり、あるいは「試み」に伴なう怪我けがのチャンスを恐れて、だれも手を下す事をあえてしなかったら
それのみかとこってからは、いもとだと云って紹介された御米が、果して本当の妹であろうかと考え始めた。安井に問いつめない限り、このうたがいの解決は容易でなかったけれども、臆断おくだんはすぐついた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なんとならば、科学は畢竟ひっきょう「経験によって確かめられた臆断おくだん
ルクレチウスと科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)