聟入むこいり)” の例文
「ところで、お孃さん、明日はいよ/\河内屋へ引取られることになつたさうですが、いづれ油屋の佐吉も河内屋へ聟入むこいりでせうな」
銭形平次捕物控:050 碁敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
農夫の立場から見れば、嫁取よめとり聟入むこいり・御産・元服・節季せっき・正月などという語と同じ程度に、胸のとどろきなしには用いることのできぬ語であった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
織田信長が聟入むこいりをするとき頭の髪を茶筌ちゃせんったと云うがその節用いたのは、たしかそんな紐だよ
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
元日にも聟入むこいりの時に仕立てた麻袴あさばかまを五十年このかた着用して礼廻れいまわりに歩き、夏にはふんどし一つの姿で浴衣ゆかたを大事そうに首に巻いて近所へもらい風呂ぶろに出かけ、初生はつなり茄子なす一つは二もん
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
いとひの聟入むこいり祝言しうげん表向おもてむきにせず客分きやくぶんもらうけたるがもとより吝嗇の五兵衞なれば養父子の情愛じやうあひ至てうすく髮も丁稚小僧同樣に一ヶ月六十四文にて留置とめおき洗湯せんたうへは容易に出さず内へ一日おいて立る程なれば一事が萬事にても辛抱しんばうが出來兼る故千太郎は如何はせんと思案の體を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
もつとも柴田の跡取娘を狙つたり、何んとか言ふ大身に聟入むこいりする話があつたんだから、少しは氣をつけたんでせうよ」
「さらば語り申そう聞きたまえや。昔々どっと昔の大昔、ある家に美しい娘が一人あったとさ」と、語り始めたのは琵琶法師聟入むこいりの喜悲劇であった。昔の「猿の聟」の作り替えのようなものであった。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「川波勝彌は惡い人でございました。姉が自害したことが世上の噂に上り、大身への聟入むこいりの許も破談になると、今度は、私へ無體なことを申しました」
荒物屋の老爺は近頃の與三郎は越後屋のおこのに夢中で、母親さへ承知してくれれば、近い内に自分は越後屋へ聟入むこいりするかも知れない、何しろ金澤町でも一二といはれた身上しんしやう
「さア、のがれぬところだ、白状せい。聟入むこいりの晩、花嫁を自分の手で殺すとは何としたことだ、——言ひのがれは無用だぞ。此の家は宵から大勢で取圍んでゐる、曲者は外から入る筈はない」
ガラツ八の八五郎が、その晩聟入むこいりをすることになりました。