老爺らうや)” の例文
事實じゝつ此世このよひとかもれないが、ぼくにはあり/\とえる、菅笠すげがさかぶつた老爺らうやのボズさんが細雨さいううちたつる。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
二代續いて忠勤を勵んでゐる此老爺らうやないがしろにすると云ふことがあるものかと思つての衝突である。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
里芋、大根、唐蜀黍たうもろこしなどの畑のそこはかとなくつらなりたる、殊に、白髮の老爺らうやの喪心したるやうに、默して背を日にさらしたる、皆これ等古驛に於て常に好く見る所の景なり。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
我をして先づ想はしめよ、見せしめよ、聞かしめよ、しかして教へられしめよ、彼植木屋は何ぞ。彼はこれ一箇市井しせい老爺らうや、木を作り、花を作り、以てひさいで生計を立つる者のみ。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
七十近い禿頭はげあたま老爺らうやそばに小さく坐つて居る六十五六の目のひたとひた老婆にかう言ふと
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
これを見て居た六十五六の今一人の老爺らうやは、そばに居た五十二三の主婦に話しかけた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
わが友はこの福島町なる奇應丸きおうぐわん本舖ほんぽ高瀬なにがしの家にとゞまれりと聞くに、町にるやいな、とある家に就きてまづその家の所在を尋ねしに、朴訥ぼくとつなる一人の老爺らうやわざ/\奧より店先まで出で來りて
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
隣の老人が舳先へさきの方に行つた跡で、主婦あるじ老爺らうやに小声で言つた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)